新年明けましておめでとうございます。昨年末に高校時代からの友人であるBTJ編集長の河田さんと飲んだために、新春展望を書くことになりました。今、大晦日のお昼過ぎで、締め切りまでわずかな状況です。

 さて、私が飲んだ勢いで河田さんに語ったのは、国民皆研究者制です。韓国などが国防のために徴兵制を行っているなら、日本は軍事力の代わりに高い研究力を維持するために国民全員が義務として研究を行うことにしようというものです。

 これは冗談ですが、日本が本気で科学立国を目指すなら、自衛隊の軍事力と同様に研究開発費とそれを担う人材について目標値を設定し、それを維持することが不可欠です。研究開発費についての議論はあると思いますが、人材については明確な目標が議論されていないと思います。新防衛大綱での減少が話題となった陸上自衛隊の編成定数に対応するような、研究力維持のための研究者数の議論が必要だということです。

 総務省の統計では、平成21年3月31日現在で日本の研究者総数は83万9000人、研究補助者数は22万6000人、技能者は6万5800人とのことで、研究者は8年連続して増加しているそうです。研究者のうち、非営利団体・公的研究機関の研究者数は4万300人、大学の研究者数は30万5800人となり、企業以外では大学が研究を担っていることが分かります。しかし、大学の研究者には博士課程に在籍する大学院の学生も含まれている。少し古い統計だが平成16年度は5万9000人でした。総数の20%程度であるが、教員数に人文社会科学を含む教員が含まれていることなどから、実際の貢献の割合は相当大きいと考えるべきです。

 また、大学院学生の多くは授業料を払っているだけなのに研究関係従業者数として含まれていることも少々おかしな話です。アメリカでは研究支援業務を行う学生に限られ、しかもその数に定数をかけているとのことです。日本の科学技術を維持するためには、水増しではなく、実際の研究を担っている大学院生や博士研究員数が維持できる全体システムを構築する必要があります。

 さて、河田さんと飲んだ翌日羽田発のフライトで、ホノルルで行われていたPacifichem 2010に行きました。アメリカで行われる国際会議にも関わらずに日本人が半数以上を占めていました。その中でも、学生を含む若手研究者が多く、しかも非常に質が高い研究発表を行っていました。

 また、私は日程の都合で参加しなかったのですが、神戸で行われた分子生物学会と生化学会の合同年会BMB2010は例年以上の盛り上がりだったと聞いております。世界の様々な学会に参加していますが、BMBほど若手研究者が多数参加し、レベルの高い発表を行っている学会は見たことがありません。2011年も彼らは頑張って研究してくれるはずなので、科学立国日本の活力が維持されることは間違いありません。

 しかし、太平洋戦争のときのように、正しい国家的戦略がなければ個人の努力は最終的には意味のなくなってしまいます。国家レベルで科学技術を担う人材を育成し維持する制度を作らなければならない時期に来ていると思います。人材育成は継続性が大事であり、一度途切れると取り返しがつかないことになります。これは、若貴時代で浮かれて日本人力士の育成を怠った相撲協会の体たらくを見ても理解できると思います。

 2011年ですが、現在進んでいる潮流は止まることはないので、ゲノムや再生医療などの最先端研究は予定されたレベルは必ず達成されると思います。しかし、それが産業につながり、人類の幸せや日本の発展に貢献できるかどうかは分かりません。科学技術はスポーツの競技のようなものなので、ある理想的な条件の下で最先端の成果と技術を競い合うものです。一方、現実社会は開いた空間であり、科学技術がその中で価値を与えるものになるかどうかは別の問題です。

 個人的には、これまでの研究が一段落ついたので、基礎研究について新規なテーマにチャレンジするとともに、自分の会社を通じて環境問題などで社会に貢献したいと考えています。こちらは実用性を意識したものなので、必ず実用化するものを世に出す予定です。
 
 それでは、2011年が皆様にとって良い年であることを祈年しております。

※2011年のキーワード

舵取り:政治と同じようにバイオも舵取りが重要です。予算が潤沢なときは問題がなかったのですが、予算が限られて来た現在、舵取りが重要です。問題は誰がどのように動かすかです。政治と同じように混迷すると、やばいです。

資源と環境:バイオも資源と環境への寄与が問われる時期にきたと思います。

人材育成:これが最も大事ですね。


+BTJJ+