2010年の日本のバイオベンチャーは、製薬会社との提携解消や承認申請の取り下げなど暗いニュースもありましたが、一方で、大型提携の実現など明るい話題が目立ちました。このように明暗がはっきりしてきたのは、開発ステージが進み、一定の結論が出る時期にきているからです。もともと成功確率が低い新薬開発ですので、当初の見込み通りにいかないのは当然です。むしろ確率から見れば、悪いニュースのほうが多くなるはずです。そうした中、低い成功確率をクリアし、成果を出すベンチャーがいくつも現れてきていることにこそ評価の目を向けるべきです。

 2008年から増加した創薬ベンチャーの提携は、2010年もペースが衰えていません。2010年の特徴は提携領域の拡大と大型提携の実現です。引き続きバイオ医薬が中心ですが、これまでのような抗体医薬やがんワクチンばかりでなく、インフルエンザワクチンや核酸医薬、再生医療などにも領域が広がりました。また年末にはオンコリスバイオファーマがHIV治療薬で米BMS社と提携し、最大2.8億ドルという日本のバイオベンチャーの提携では最高の契約金額を記録しました。

 こうした背景には、「2010年問題」に端を発する大手製薬会社の戦略の転換があります。従来、彼らの戦略は、低分子医薬による生活習慣病治療薬開発、選択と集中、自前主義に象徴されましたが、それぞれ、バイオ医薬によるアンメット・メディカル・ニーズ領域の治療薬開発、事業分野の拡大、オープンイノベーションへと変化しました。これが提携を促進させる原動力となっています。世界的に見ましても、2010年はオーファンドラッグや眼科領域など、これまでのブロックバスター狙いの戦略では考えられないような領域での買収や提携が目立ちました。

 また2010年は異業種からのバイオ医薬への参入も注目を集めました。富士フイルムによる再生医療ベンチャーのJ-TECへの約40億円出資やカネカによる抗体医薬ベンチャーのジーンフロンティアの買収などがそれです。こうした動きはバイオ医薬がスタートした1980年代にも見られました。当時も化学、繊維、食品などの企業が参入しています。新規性が高く実績の少ない創薬技術は、差別化を図ろうとする新規参入企業のほうが取り組みやすいようです。

こうしたトレンドはまだ始まったばかりです。バイオベンチャーの提携のチャンスは確実に増えており、2011年もさまざまな提携事例が話題を呼ぶことでしょう。領域も一段の広がりを見せると予想されます。

 開発品導入型ベンチャーを中心に、承認事例も出始めました。2010年はシンバイオ製薬の抗がん剤、そーせいグループの緊急避妊薬などがその代表です。2011年はJ-TECの自家培養軟骨の承認可否が注目されます。

 成果を見せるバイオベンチャーの数は着実に増えています。2010年はデータをしっかり蓄積した企業が時間はかかったものの提携などにこぎつけた、大変希望をもたせてくれる年でした。「待てば海路の日和あり」、2011年も粘り勝ちベンチャーの明るいニュースを期待します。

 証券アナリストとしては、バイオベンチャーのIPOが活発化することを強く望みます。2010年はセルシードの1社で終わりました。主な原因は開発や提携の遅れですので、それらが解消されれば2011年のIPOは増えるはずです。黒字企業の増加で投資家の関心は高まりつつあります。投資家は新鮮味のある有力企業を求めており、多くの企業のIPOへの挑戦を期待します。その際の投資家との橋渡し役は専門の証券アナリストにお任せ下さい。