新年おめでとうございます。

 日本ではここ約20年以上政治の迷走が続いています。残念なことです。

 しかし、昨年の日本には嬉しいこともありました。鈴木・根岸両先生のノーベル化学賞受賞により、各国の科学技術政策を考える人たちから「日本がなぜノーベル賞を取れるのかその秘訣を教えて下さい」といわれるようになりました。21世紀に入ってからの10年間、毎年1人の割合です。

 しかし、国内では「あれは35年も前の研究成果によるのではないか、もうこれからは望み薄なのではないか?」という問いかけを頂きます。日本国内では現在自虐趣味が蔓延しています。若い人たちが日本は本当にどうしようもないだらしない国だと思ってしまうのではないかということが心配です。現状への不満が「よし、それなら自分たちがこの国を改革していこう」というエネルギーに変わってくれるとよいのですが。そのためのメッセージは科学技術から発していきたいものです。

 昨年、私は『科学技術は日本を救うのか』という本を著しました。その真意は「なぜ、日本は貿易黒字をここ25年もずっと続けていなければならないのか? その世界最大の巨額蓄積黒字をなぜ海外で毎年さらに増やしていかねばならないのか? 結果的に起きるとめどなき円高のなかで海外逃避を続ける製造業、そして国内の失業。国内に雇用を確保するにはどうしたらよいのか」と問いかけ、日本が陥っている明白な負の連鎖を断ち切る科学技術の努力を含めた政策提言をしています。

 ライフ・サイエンスおよびグリーン環境の2大技術分野は直ちに輸出産業に結びつく「国際競争力!」といった分野ではありません。むしろ、私は上記の「日本が陥っている負の連鎖」から抜け出すための内需を増やす分野と捉えています。国内で企業が新たな分野で活動し、雇用を増やす、これが日本の活力に繋がるからです。

 幸いにして、これからも日本はノーベル賞を取れるのか、という質問に対しては「大丈夫。来年以降も楽しみにお待ち下さい」とお答えすることができます。たとえば、過去5年間の論文被引用件数世界トップを記録したのは審良静男大阪大学教授、翌年も同じく審良教授、次は細野秀雄東京工業大学教授、一昨年は山中伸弥京都大学教授、そして昨年は北川進京都大学教授だったことがトムソンロイター社により報じられました。5年連続で日本の成果が瞬間風速的に世界の研究界を大きなフィーバーに巻き込んだことを意味します。しかも、みな若手の研究者たちです。すべて科学研究費補助金で育ち、そして、若いうちにJSTの戦略的創造研究推進事業という「課題達成型基礎研究事業」により目利きたちに見出され、特別な支援を受けて新たな分野を開拓したものです。世界をフィーバーに陥れる研究成果が毎年日本から出てくる時代になったのは、まだここ数年のことです。

 その意味で、これまでのスタイルのノーベル賞受賞者に加えて、日本からは新たなタイプのノーベル賞受賞者が増えてくると私は予言できます。すなわち「徐々に黒光りしてくる成果」に加えて「新分野を切り開き、世界にフィーバーを起こしつつ、もらうべくしてもらう受賞者」が増えるということです。

 新年の日本を明るくしていく皆様の活動に期待します。


+BTJJ+