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東京大学大学院医学系研究科

演題:意識と意識障害の脳科学

演者:日本大学大学院医学研究科 応用システム神経科学分野(脳神経外科)
教授 片山 容一

日時:平成22年2月15日(月) 14:30~16:00

場所:東京大学 医学部教育研究棟13階 第6セミナー室

要旨:意識は、覚醒しているだけでは成立しない。「~を意識する」というよう
に、志向性を持つことが意識のもう一つの条件である。意識は、世界を志向する
対象意識と、自己を志向する自己意識とに区別される。
生命は、生存するために、自己を世界と区別し、世界に向けて働きかける。それ
が、自己と世界との間に極性を生む。さらに、身体が高度に分業するようになる
と、身体の各部に起きた出来事を、同一の自己に起きたこととして統合しなけれ
ばならなくなる。そのために発達したのが脳である。つまり、対象意識が働くと
き、脳には必ず「空間における同一の自己」が生まれている。
脳が発達すると、目標を設定し一定の時間をかけてそれを達成しようとするよう
になる。そのためには、目標の設定からその達成まで、同一の自己が続いていな
ければならない。こうして、脳に「時間における同一の自己」が発生する。自己
は、決して自己そのものを志向すること(自己言及)はできない。しかし、過去
の自己イメージあるいは未来の自己イメージなら志向することができる。それが
自己意識である。
かつて、米国神経学会は、植物状態を「対象意識および自己意識も失われている
状態」と定義した。その根拠は、これらがあることを示す行動表出がないという
だけのことであった。
しかし、脳機能イメージングによる研究では、植物状態にある患者でも、「~し
ているところを想像せよ」という指示をすると、健常者と類似の脳活動を起こす
と報告されている。そうだとすれば、少なくとも対象意識はあると考えられる。
また、私たちは、過去20年にわたり、植物状態から脱却させるために脳内植込み
電極による刺激(DBS)を試みてきた。この方法で、対象意識や自己意識がある
ことを示す行動表出を誘導できることがある。これらの意識障害における観察
は、意識そのものの研究にも手がかりを与えてくれる。

主催:東京大学大学院医学系研究科 統合生理学教室(宮下保司教授)

連絡先:東京大学 医学研究科 構造生理学教室(河西春郎)
TEL 03(5841)1440 http://www.bm2.m.u-tokyo.ac.jp/



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