「先生が学生にやっておられる知財の授業は、山口県の活性化に役に立ちますか」、県の経営者団体への知財の講演会での質問があった。

 「会社での製品開発や改善に活かして、地域の活性化につなげてもらうため、知財授業を卒業前の工学部四年生におこなっている」という説明に対する質問である。

 「もちろんです。特に実践に役立つ内容を吟味していますよ」と得意げに私は答えた。「では、先生のところの卒業生は何人県内に就職しますか」、「えーと・・・・・」答えに詰まった。

 帰って早速事務部局に問い合わせると、卒業生の7%が県内に就職しているだけだという。正直驚いた。周りの学校はどうなのだろうか? 

 教育委員会や県内の他大学、高専にも訪ねてみた。県内の物づくり系企業に就職する全理工系の学生のうち、大学生は6%、短大で2%、高専は7%で、何と専門高校が85%を占めている。山口県は98.7%が中小企業で、そこの技能現場を支えているのは、大学でも高専でなく、専門高校の卒業生である。 

 比較的技術の障壁が低い製品を扱っている中小企業こそ、知的財産権で防衛する意義が、各地のセミナー等で盛んに提唱されている。ところが一人で何役もこなさなくてはならない中小企業の就業状況では、セミナー等でじっくりと知財を勉強できる環境にはほど遠い。

 せっかく注目すべき製品を開発しても、保護されていないために、海外を含めた第三者の侵入を阻止できずに、経営的にいきづまる中小企業は、けっして珍しいことではない。そこで、いずれものづくりに携わるであろう専門高校生に、企業に送る前に知財教育を行うのである。それらの知識は、将来どこかできっと活かすことができるはずである。

 折しも専門高校における知財教育が、平成20年から、学習指導要領に告示され、しかも2013年には、完全実施が求めれていることは、既にご存じの通りである。教育現場では、喫緊にこれらの対応が求められている。

 一昨年前から、専門高校での知財授業のお手伝いを始めたが、一人でできることはしれている。本誌の購読者は知財に造形が深い人が多いと聞いている。時間的に余裕の方には、お近くの専門高校での知財ボランティアを是非お願いしたい。

 そしてもの作りのなかにも、立派に特許が生まれることを一人でも多くの生徒に知らせて頂きたい。生徒達の純真な気持ちや真剣な瞳に出会うと、人生の煩わしさが吹き飛ぶことは請け合いである。

 将来ものづくりにおいて、知財の知識を新しい発想や改善・工夫に活かし、中小企業の収益の向上のみならず、それらが地域の活性化につながり、ひいては我が国の国際競争力を高めることになる・・・・・こんなことを新春の初夢に描いているところである。

※2010年のキーワード
独立行政法人の事業仕分け、デフレスパイラル、年金の一元化


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