日本のバイオベンチャーの夜が明け始めました。まだ明けて間もないため、全体としては暗い部分も目立ちます。しかし、着実に成果を見せ始め、存在感を増していることは確かです。

 変化が端的に現れたのが株式市場です。11銘柄を対象に当社で作成しているバイオベンチャー株のインデックスは、2008年9月1日から2009年9月中旬までの約1年間で3倍に上昇しました。その後調整していますが、年末には約2倍の水準で取引を終えました。この間には「リーマン・ショック」があり、その影響で日経平均株価が2009年末で2008年9月の水準を回復していないことを考えると、バイオベンチャー株のパフォーマンスの高さがうかがえます。

 株価上昇の背景には損益の向上があります。2009年5月以降に発表された各社の決算数字に変化が現れました。それまでは黒字企業というと、タカラバイオなど一部に限られていました。ところが今回はオンコセラピーを皮切りに、メディネット、PSSと黒字化を達成する企業が増え、PSSは今期に上場以来初の配当まで予定しています。これまでバイオベンチャーの決算といえば赤字拡大が当たり前だったことから見ると、隔世の感があります。

 バイオベンチャー株は新薬開発などの話題で買われる「材料株」と見られてきました。それが今回のように損益を評価する相場に変わってきたことは大変重要です。そのおかげで投資家に変化が見え始めました。機関投資家の多くは材料株では手を出しませんが、最近は損益への向上期待から、彼らの関心が高まりつつあります。

 新規上場も順調です。2007年以降毎年3社ペースを維持しており、2009年も同様の社数となりました。一方、2009年の全業種の新規上場社数は前年比6割減の19社となり、3年連続の減少です。この結果、新規上場に占めるバイオベンチャーの割合は年々高まる傾向にあります。

 変化は上場企業だけではありません。未上場企業を中心に製薬会社との提携が増えています。2007年までは年間2~3件程度でしたが、2008年には倍以上に増え、2009年も同水準を維持しました。さらに注目したいのが提携相手です。これまで日本のバイオベンチャーの提携先は国内の製薬会社がメインでしたが、2008年以降は欧米大手製薬会社との提携が複数実現しています。イーベックとドイツBoehringer Ingelheim社との抗体医薬による提携、カイオム・バイオサイエンスとスイスNovartis社との抗体医薬の作製技術による提携などです。抗体医薬は世界的にもバイオベンチャーがリードし、製薬会社との提携が活発ですが、日本にもこの流れが押し寄せています。

 以上の変化をもたらしたのは、バイオベンチャーの開発の進展や製薬会社のオープンイノベーションの推進などです。2010年もこの傾向は強まると予想され、製薬会社のニーズに合致した技術や開発品をもつベンチャーは一段の飛躍が期待できます。また創薬ベンチャーの開発品で承認待ちが複数品目あり、2010年は日本のバイオベンチャーの歴史始まって以来の新薬発売ラッシュの年となるのか、大いに注目されます。新規上場も開発段階の進んだ創薬ベンチャーを中心に、社数では2009年を下回ることはないと見ています。

 日本のバイオベンチャーがようやく成果を見せ始め、投資家の期待を取り戻しつつあります。私はバイオ専門の証券アナリストとして、バイオベンチャーの魅力をより多くの投資家に理解してもらえるよう、2010年も引き続き的確かつタイムリーな情報発信に努めたいと思っています。