あけましておめでとうございます。

 本年は、キャンバス創立10周年にあたります。一高校生の「癌を治したい」に始まり、長い間表に現れることのなかった思いが、G2チェックポイント阻害実験の成功をきっかけに、キャンバスという清水となって地表に現れ、エンジェル・ベンチャーキャピタリスト・アドバイザー・ライセンサー・科学顧問・商社員・製薬会社員、さらには、キャンバス社員となった者達など様々な人々の、多くの場合愛する者を癌で失った痛みを伴う「癌を治る病気に」という思いにより、その流れは次第に大きくなり、昨年東証マザーズへの株式上場をし、創立以来累計約60億円の資金調達をさせて戴きました。

 大学の研究チームから生まれた抗癌剤の種は、最適化・薬効/毒性/安全性薬理試験を乗り越え臨床試験入りし、武田薬品との共同事業となり、国際的な臨床第2相試験を行うまでに育ちました。抗癌剤の臨床試験、特にその第1相試験の初期、患者さんは、それが自分にとっては全く利点がないにも関わらず命を懸けるものであることを十分理解して参加してくださる。将来その薬の候補が、自分以外の人達の癌を治すことを願って命をかけてくださる患者さんがいて、初めて臨床試験を進めることができる。私達の仕事は、そういう多くの人々の思いの上に成り立っています。

 今年、キャンバスにとって最も重要なのは、このCBP501の臨床試験、さらには、第2のパイプラインであるCBS9106の前臨床試験を着実に進めることです。

 創薬は、基礎研究から臨床試験に入るまでに十数年、臨床試験入りしてからは時間のみならずそれまでとは桁の違う莫大な費用がかかる上に、成功確率は低い。企業の命運や業績を左右する成功確立を高める最大のポイントが基礎研究であるにも関わらず、それが正しかったかどうかが証明されるまでには、とてつもなく長い時間と多くの障害を乗り越えなければならない。証明されていない物の善し悪しを確実に見極め、長い時間と多くの障害を乗り越えて証明するのが、プロの仕事だと思います。

 10年目の今年、大きく変わったことが一つあります。「我々は研究・臨床についてはそれなりにプロだが創薬については素人」と言っていた時代は終わり、創薬のプロになったということです。夢に寄付をしてくださる方々に支えて頂く慈善事業ではなく、投資に見合うリターンを求められるプロに。しかもその仕事には、多くの人々の命を懸けた思いが託されています。

 幸いなことに、世の中の経済情勢や国の保険制度がどう変わろうと、本当に癌を治すことが出来れば確実にリターンが得られるという、大きな方向性では、我々の本来の目的「癌を治す」と創薬のプロとしてやるべきこととは、完全に一致しています。素人という言い訳が通用しなくなった今、我々は、「癌を治す夢を持った集団」ではなく、「癌を治すプロの集団」になった。キャンバスの全員が、プロとしての自覚と責任を持って進む新年が、10年目の2010年だと思います。

最後になりましたが、バイオベンチャーを取り巻く環境の今年の展望も、私どもと同じ。これまで積み重ねてきた準備が、実を結ぶ方向にあるのかそうでないのか。創薬ならば、臨床試験で決定的な有効性を証明する方向に向かっているのかそうでないのか。つまり、事業計画や提携・買収といった成果を生むための手段が注目されるのではなく、本当に成果を生み出したのか、あるいは、成果に向かっているのかが問われる年になると思います。