私たちには、夢があります。-どんな病気にかかっても、治してもらえる。
 私たち研究者には、夢があります。-自らの研究で、患者さんがほほ笑んでくれる。
 そして、私にも夢があります。-どんな田舎でも、最先端の医療を受けることができる国、日本。

 2010年は、我が国の再生医療の歴史にとって、かけがえのない1年となると信じます。

 再生医療・細胞治療は、ヒトから得られた細胞・組織を原材料としてそれを調整し、患者さんに投与・移植するという治療法です。世界的に見ると医薬品医療機器としての薬事法による規制を受けていますが(薬事法トラック)、そのトラックに加え我が国には独特のトラックがあります。医療法・医師法の下で行われる臨床研究から先進医療(第3項先進医療:高度医療評価制度含む)から手技としての保険収載を目指すトラックです(医療法・医師法トラック)。

 薬事法トラックでは、多能性幹細胞や体性幹細胞の医薬品医療機器としての有用性基準が明確化されます。いわゆる1314号通知別添2の改定であった平成20年自己通知・同種通知に加え、現在多能性幹細胞や体性幹細胞のかかるガイドラインの策定に向け、医薬品医療機器総合機構顧問・近畿大学薬学総合研究所所長早川堯夫先生を主任研究者として厚生労働科学研究費補助金レギュラトリーサイエンス総合研究事業「ヒト幹細胞を用いた細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確保のあり方に関する研究」行われているところです。2010年にはこれら成果が通知として公となり、多能性幹細胞を用いる医薬品医療機器開発を促進すると思われます。諸外国の規制を参考にしてきた我が国が、世界の先陣を切ってiPS細胞の臨床利用に門戸を開くのです。黒船の呪縛は、再生医療から解き放たれるのかもしれません。

 医療法・医師法トラックでは、保険診療化の前段階として有用性検証のために行われる臨床研究についての見直し議論が進められています。具体的には、平成18年厚生労働省告示第425号「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の見直し作業です。主要な見直し論点は、指針の希求水準の明確化とES細胞iPS細胞を含めた多能性幹細胞を用いる臨床研究の解禁です。当然、厚生労働大臣に意見を聴かなければなりませんが、スタートラインにつくことができる、というのは画期的だと思いませんか? 多能性幹細胞のFirst-in-Manに関しては、feeder細胞の品質管理、多能性幹細胞由来細胞組織製剤の移植・投与後の腫瘤形成の否定など、乗り越えなければならないハードルはまだまだあります。でも、夢みて行い、考えて祈ることができます。

 薬事法トラックと医療法・医師法トラックを結ぶ制度が走るかもしれません。高度医療評価制度・第3項先進医療です。臨床研究で得られたデータを薬事法トラックに乗せるために造られた制度です。これまで再生医療で利用された案件はありませんでした。仄聞するところ、2010年には再生医療で初めての高度医療評価制度への申請が行われる予定と伺っています。

 さまざまな法律、制度はトラック(線路)です。走り方を知らなければブレーキしかかからないかもしれません。これまでの線路は、もしかしたら走りにくかったかもしれません。でも、2010年、もっと走りやすくなりますよ。

 「2010年の奇跡」。そう言われる時代が来てほしいですね。


+BTJJ+