当センターは、日本初の農林水産と工業が合体した総合研究機関として、昨年4月にスタートした。私は工業系出身者として理事長に就任した。私は農産物の成長に影響する「毎日の天候」が心配の種となっていた。温暖化の影響によるのか、急激な気象変動がある日が多くなったからである。農産物の生産量安定化には環境制御が不可欠であり、このためには、生産量を制御できる植物工場が必要となっていた。

 農林水産省と経済産業省が昨年11月にまとめた「植物工場の事例集」によると、現在34の完全人工光型植物物工場と16の太陽光・人工光併用型植物工場が稼働している。栽培品目は、リーフレタス、サラダ菜、フリルアリスなどのレタス類が中心で、ハーブ類もある。国では3年間で植物工場の設置数を3倍に増やす計画で、経済産業省では昨年「先進的植物工場施設整備費補助金」(当初補正予算額47億円)で8つの事業を採択した。完全人工光型植物工場の施設整備は、千葉大学、明治大学、信州大学、大阪府立大学、島根大学で行われる。そして、千葉大学、東京農工大学、愛媛大学と当センターでは、太陽光利用型植物工場の施設整備を行う。これらの施設は完成後、研究拠点として地域の企業などに技術指導や人材育成を行い、植物工場の普及に資していくことになっている。なお、農林水産省でも「モデルハウス型植物工場の実証・展示・研修事業」(当初補正予算額約37億円)の公募が昨年終了している。

 当センターでは、「寒冷地対応型植物工場基盤研究拠点の整備」が採択された。施設完成後、2年間で寒冷地に適した植物工場のビジネスモデルを構築し、3年目にその実証を行う予定である。主な課題は、1.使用エネルギーの最適化、2.大需要地から離れている寒冷地向き品目の選定、3.低コスト栽培システムの開発、4.経済性評価である。

 課題1.では、夏場の雪利用と冬場の堆肥熱利用、風力や地熱などの自然エネルギーの活用などにより季節ごとの使用エネルギーの最適化を行う。また、導入コストの高価な風力に関しては、発電以外の利用法を検討する。課題2.では、冬場は地産地消での葉物、夏場はLEDなどを用いて機能性を高めて付加価値が増す作物を選定する。課題3.では、地域内のバイオマスを利用した培地やユビキタス制御などを検討する。そして、これら全体の経済性を評価して、現状より30%コスト低減したビジネスモデルを構築することにしている。なお、完全人工光型植物工場に関しては、空き工場、空き店舗、空き教室などの活用を検討していく。

 植物生産は、CO2吸収による環境問題だけでなく、これからの世界人口増に伴う食糧問題の解決にも寄与できる。上記のような技術開発を行うことにより、植物工場の設備や技術を輸出でき、地域の産業振興にも寄与することができる。このため、農工連携のメリットを最大限活かした総合力で採算の取れる寒冷地対応型植物工場を実証していく。

 2010年は、各地で研究拠点が整備され植物工場の普及が本格的に始まる重要な1年になると考える。また、付加価値を創造するバイオテクロジーは、植物工場の普及にかかせないと考える。

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