2010年は、新技術創造へ向けてチャレンジを開始する年である。食料生産に関係する新技術。それは技術立国を自負するわが国にふさわしいチャレンジである。

 今、人類が直面する地球規模の3大課題は、「環境」「エネルギー」「食料」である。特に、食料生産については世界規模の水資源の枯渇と土壌汚染が深刻である。気象変動の激しさが増す中で今求められているのは、作物生産に関する基盤技術の「革命」である。

 紀元前8000年頃から綿々と続く自然頼りの技術が破綻に向かっている。農薬や農業機械などによる収量増、効率化さらに軽労化は進んだが、依然として、自然を「あざむく」あるいは「搾取する」現在の生産技術は、水資源の浪費、農薬の使用、表土流失、土壌汚染、森林伐採などの問題をますます進行させている。低コストの太陽エネルギーと水を利用して低価格な作物を生産してきたツケが現況をもたらした。太陽エネルギーと水は本当に低コスト資源なのか。1tの穀物を生産するのに1000tの水を使う農業が今後も持続できるのか、技術的にはとりわけ重要になるだろう。

 我々は太陽エネルギーを作物を介して命に換えてきた。穀物などのカロリー源となる作物は膨大な光エネルギーを必要としており、レタスのような野菜は比較的弱光で生育する。太陽エネルギーは今も昔もさほど変わりなく地上に降り注いでいるが、大地の方が劣化してきている。そうかといって、自然回帰の農業を進めたり、人類の活動を意図的に抑制したりすることは非現実的である。世界の人口の急増は免れないからだ。

 今後、太陽のみならず、すべての利用可能なエネルギーを、いかに有効かつ安全に食料に変換できるかが人類生存のために問われる。この変換プロセスを農業と呼ぶならば今こそ真の農業革命が求められる。エネルギーを安全かつ効率的に作物に変換する、しかも、水資源の浪費、農薬の使用、表土流失、土壌汚染、森林伐採などとは無縁、そういう技術を創造することが農業革命である。

 今、「農業革命」の兆しが見え始めている。それが植物工場である。

 既存の植物工場の課題は明らかにされている。特に、人工光を利用するタイプの植物工場では、電気を無駄遣いする、設備コストやランニングコストが高額になる、生産可能な作物が限られている、露地物に比べて高価になるといったことが問題になる。従来、植物工場に関する技術開発の多くは民間に委ねられていたために、植物工場に関する総合的な基盤技術の開発を大々的に推進する機会は極めて限られていた。2010年から国内各地の研究機関で植物工場基盤技術研究が国の支援でスタートする。大阪府立大学もこのプロジェクトに加わる。植物工場のための総合的な基盤技術開発が広範囲に行われ、植物工場が背負っている課題を解決し新しい産業として羽ばたくことに期待が集まる。

 作物の生産環境は、自然環境のみならず農業従事者の高齢化など社会的環境も加わって近視眼的な経済性のみの追求では将来展望が描けない状況にある。それゆえに国の支援が是非とも必要と考える。植物工場は多様な要素技術の集積である。まさにDNAからロボティックスまであらゆる技術のインテグレーションが求められている。農業革命は我が国から起こしたいものである。

+グリーンバイオ+BTJJ+