2010年は、創薬開発にとって、早期探索的臨床試験とイメージングバイオマーカーがキーテクノロジーになると期待されます。これは医薬品企業における創薬開発の変革に繋がると共に、アカデミアにおけるライフサイエンス研究の進め方においても実用化への重要な指標になると考えるからです。

 昨年11月の事業仕分けでは国のライフサイエンス研究の実用化を巡って様々な論議が巻き起こりましたが、アカデミアの研究者の意識改革を促す意味で貴重な機会であったと思います。「先行研究に大規模な予算をかけたにも関わらず、実用的な成果が無くて、その反省の上に立っていない」などの意見がありました。生物系のサイエンスでは、基礎研究から実用化に、短時間で直結することは極めて難しいにも拘わらず、生物系の大型研究では、研究者は得てして、実用化がすぐ先にあるかの印象を人々に与える傾向があります。競争的研究費の申請書には、基礎研究に従事する研究者が、創薬への実用化を、あたかも直ぐに可能であるように書いていることも多いですが、戒めなければならないと思います。

 さて、日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)において、マイクロドーズ早期探索的臨床試験の統一基準作りの議論が進展し昨年6月11日付け文書にて最終合意され、我が国では今年中に公示の予定と聞いています。いま、この早期探索的臨床試験にPET分子イメージング技術を活用し、医薬品の候補化合物のヒトでのProof of Concept(POC)を開発の早期段階に見極めることに着目した研究が進められようとしています。

 受容体特異的なPET薬剤や疾患特異的バイオマーカーのPET薬剤の画像を用いて医薬品の候補化合物のPOCを確認する、イメージングバイオマーカーによる評価手法が創薬プロセスを革新すると注目されています。そのPET薬剤を実用化するための制度的基盤となる「放射性イメージング薬ガイダンス草案」の作成も進められています。この考え方を踏まえて、PET分子イメージング技術を組み込んだ早期探索的臨床試験を本格的に創薬開発へ適用することが可能になります。

 我が国では一昨年6月に厚生労働省より「マイクロドーズ臨床試験ガイダンス」が公示されましたが、早期段階の臨床試験の本来のあり方について、「血中の薬物動態(Pharmacokinetics)中心ではなく、有効性や安全性に焦点を当てるべき」との問題提起もなされています。PET画像によってターゲット臓器や組織への分布を見極めることができるので、POCと称される、疾患への有効性や副作用に対する安全性の見極めを臨床試験の初期段階で行うことが可能となり、さらにそのデータを用いてその後の本格的な臨床試験における最適な試験計画を設計することが出来ます。言い換えれば、PET分子イメージング技術を組み込んだ早期探索的臨床試験は有効性や安全性を定量的に評価する技術でありますし、国のライフサイエンス研究の、特に、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の中核的な研究として位置づけられるべきと考えます。なぜなら、創薬の実用化に直結するプロセスが明確であり、我が国における創薬戦略を革新し、世界をリードする道を拓くと期待されるからです。
 
 その意味でも、2010年はまさにイメージングバイオマーカーを活用した創薬開発の飛躍の年となることを期待しています。

+BTJJ+