新年あけましておめでとうございます。

 昨年は「政権交代」という日本の政治が新たな一歩を踏み出した年でありました。鳩山新政権の発足により私は文部科学大臣政務官を拝命し、科学技術・学術行政を担当させていただくことになりました。政務三役が一つのチームとなって、本年も我が国の科学技術・学術研究の振興に力を尽くしていきたいと考えております。

 科学技術・学術研究は、我が国の今後の成長力の源泉となるものです。特にライフサイエンス研究は、国民の健康長寿や低炭素社会の実現、新興・再興感染症への対応、食の安全の確保等の国民の安全確保に資するとともに、食料自給率向上や医薬品・医療機器等の産業競争力強化、新産業創出を図る上で重要な科学技術です。これは、昨年9月にお示しした新政権の基本方針である「人の命を大切にする社会の実現」、「医療・介護・環境など新たな分野における産業と雇用の創出による内需主導型の経済成長の実現」のために必要なものと考えています。

 昨年は公務の合間を縫って、研究の状況を直に確認するとともに現場の生の声を聞くため、幾つかのライフサイエンス関係の研究施設を訪問させていただきました。慶應義塾大学医学部では、iPS細胞などの幹細胞・再生医学研究の最前線を視察しました。iPS細胞は我が国発の画期的な研究成果ですが、現在熾烈な国際競争が繰り広げられています。再生医療の実用化を目指した研究のみならず、細胞の初期化メカニズムの解明といった基礎研究や患者さんのiPS細胞を用いた難病研究への応用など、今後は研究の裾野を一層広めていく必要があると感じました。また、放射線医学総合研究所では、重粒子線がん治療や分子イメージング研究の現状を拝見しました。重粒子線がん治療は、この15年間に5000例を超える症例に適用されたと承知しており、現在この分野で世界をリードしています。今後は、重粒子線によるがん治療の一層の普及とともに、がんの本態解明などの基礎研究を一層推進していく必要があると考えています。分子イメージング研究については、アルツハイマー病やがんの超早期診断が可能な新しい技術として、医学だけでなく生物学や工学など様々な分野の知見を結集して開発を進めています。少しでも早く医療へ応用するため、今後ともしっかりと支援していく必要があると考えています。本年も精力的に「現場の生の声」をお聞きし、政治に活かしていきたいと考えています。

 昨年は、行政刷新会議の下で試みられた「事業仕分け」が科学技術に関して大きな反響を呼びました。文部科学省に寄せられた御意見は、科学技術・文化で13万件を超え、研究者コミュニティーからも現場の研究者、学会等の組織など多くの御意見をいただきました。科学技術がこれほど多くの関心を集めるのは、過去余り例が無いのではないかと思います。この「事業仕分け」により、研究者コミュニティーを含め国民目線のもとで予算編成のプロセスを広く開示し、その過程でいかなる議論が行われているかを国民の目に明らかにしたと思います。その一方で、直ぐに国民が実感できる成果に結びつかない科学技術、とりわけ基礎研究について、その重要性や必要性をどのように国民の皆さんに説明し理解していただくか、という課題も明らかになりました。
どんなに重要な基礎研究を実施することであっても税金を投じて行う以上は国民の理解が大前提であります。このためには、研究者コミュニティーにおいても何をしていくべきなのかを大いに議論していただき、その成果として建設的な提案を御願いしたいと思います。さらに、情報発信を積極的に行うとともに、研究の現状や課題、今後の展開などを国民の皆さんに分かり易い形で説明していくことを考えていただきたいと思います。新しい年が、研究者と国民の皆さんが共に科学技術について考えていただく始まりとなることを期待しています。

平成22年1月1日(元旦)  文部科学大臣政務官 後藤斎


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