2006年米国癌学会で見た454シークエンサーのスループットは驚異的であった。07年頃から徐々に次世代シークエンサーを用いたゲノム解析のデータが発表されるようになってきた。しかし、大半はES細胞や一部の症例のゲノム・エピゲノム情報の解析であり、分化の各段階にある細胞レベルの解析、あるいは多数の臨床検体を用いた、遺伝子異常の解析は今後の課題である。

 09年に入り、次世代シークエンサーのアプリケーションはさらに拡大し、疾患のゲノム異常のみならず、DNAメチル化やヒストン修飾プロファイルなどのエピゲノムの詳細な情報が得られることが期待される。しかし、得られた情報を解析する側の進歩はまだ余地があり、バイオインフォマティクス分野の研究者の協力と充実が鍵となる。また、機能性RNAを含めた遺伝子ネットワークの理解が進み、個々の遺伝子の機能解析から細胞システムの解析へとパラダイムシフトが起こると考えられる。

 抱負としては、癌におけるエピゲノム解析を通して、基礎研究と臨床研究の橋渡しになることを目指したい。具体的には、多段階発癌における、DNAメチル化およびヒストン修飾異常の網羅的解析により、「癌化の結果起こる異常よりも癌の原因となる異常をいかに見つけるか」、に重点を置く。また、癌組織中に存在する多様な細胞のエピゲノム異常を明らかにし、細胞レベルでのエピゲノムの多様性を明らかにする。

 さらには酵母や植物で先行している、機能性RNAの遺伝子発現制御における役割について、癌細胞を用いて明らかにすることを目標とする。今年は、生化学講座に移り、教室の立ち上げ2年目になるが、5年後、10年後の研究の基盤となる知見を見いだしたい。

09年注目のキーワード:エピゲノム、次世代シークエンサー、太陽光エネルギー


※豊田教授が登場した08年のBTJ記事

BTJジャーナル08年6月号


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