サブプライム問題に端を発した大不況により、新聞・雑誌の記事に「氷河期」との表現が急に頻繁に見られるようになりました。日本のバイオベンチャー(以下、BV)を取り巻く環境は他産業より一足先に「氷河期」に入りましたが、新しい芽が確実に伸び始めています。

 新薬承認取得・国内販売の開始、再生医療製品の薬価収載、相次ぐ大手製薬企業とのライセンス契約締結など、BV各社の事業は確実に進捗しています。過去数年間の厳しい経営環境を生き抜くことで経営者は鍛えられ、大手製薬からBVで挑戦しようとする優秀な人材も増え、確実に企業としての実力を備えてきています。日本における第二のBVブームを引き起こし、他産業に先駆けて春を迎えられる可能性が高いと確信しています。

 BVにとって重要なExit Planの一つであるIPO環境は、08年度は僅か49社と前年度の121社から半数以下に激減見込みですが、BVは1社から3社と増加し大健闘しました。09年度は40社前後との厳しい予測もされていますが、BVは10社前後が準備を進めており、3-6社がIPOに成功することが期待されています。

 当社にとっても、本年は真価を大きく問われる年となります。Unmet Medical Needsが高く、市場性も大きな中枢神経疾患領域で2件の第II相臨床試験を欧州で進めています。新作用機序による「抗うつ薬」は昨年末に終了し、ほぼ期待通りの結果が得られました。「脳梗塞に伴う運動機能障害治療薬」の試験も順調に進捗し、今年の中頃には結果が得られる予定です。オプション契約を結んでいるエーザイと本契約が締結できるかが、今後の飛躍に大きなインパクトを持ちます。

 昨年末には、当社の第二の柱であるHF10の「頭頚部ガン」第I相臨床試験のINDをFDAより取得、春には米国で患者さんへの投与を開始する計画です。

 今後の事業進捗状況にもよりますが、当社も本年内のIPOを目指して準備を進めています。一部上場会社の不祥事などにより、市場当局の審査基準は益々厳格化されています。しかし、新興市場への投資家の信頼回復には、必要かつ望ましい処置と思います。J-Sox対応もBVにとってはかなりの負担になっていますが、経営体制の強化に役立つとプラス思考で対応しています。

 医薬品の研究開発では、Research by Biotech & Development by Big Pharmaとパラダイムシフトが確実に進んでいます。事実、米国の新薬承認に占めるバイオ製品の比率は07年には47%迄に比率が高まっています。大手製薬企業は、バイオテック(欧米ではBVとは言わない、またAmgenなどのように既に大手に成長した企業も複数ある)との提携・買収を大きな成長戦略としています。日本でも研究開発がある程度まで進捗したBVも増えており、今後、国内外大手との提携が活発化する事が期待されます。

 厚生労働省は「医薬品産業ビジョン」を公表し、国際競争力強化に向け諸政策を推進しています。日本製薬工業会の庄田会長も、日本経済新聞とのインタビューで「母国での基盤が弱い産業はグローバルでも成長できない」と発言しています。日本のBVの活躍が期待され、また、一層の努力と頑張りが求められています。

 国内の臨床試験は海外と比較して所要期間が長く、費用も2-3倍かかります。国内大手製薬企業の目も主に海外のBVに向いています。VCのBVへの投資総額も、1件当りの投資額も欧米と比較すると大幅に見劣りします。しかし、不満を言うだけでは状況は改善しません。BV経営者による、幾つかの私的勉強会が組織され、講演や情報交換を通じて研鑽を重ね、更には、厚生労働省を始め関係当局・機関への政策提言などを始めています。

 日本における第二のバイオベンチャー・ブームを目指し、確実な努力と歩みが積み重なれています。当社もBVの一社として、最善努力を尽くしてゆく所存です。