2009年はバイオ業界も未曾有の不況を乗り切ることにエネルギーが割かれる年になろう。

 震源地の米国では資金繰り悪化のため、製薬企業でさえパイプラインの精査を行い、アーリーな段階の開発からキャッシュに直結するフェーズIII試験や市販後調査に資金の配分を移している。財務体力のないバイオベンチャーは開発の中断に追い込まれる企業が増加している。米FDAが審査基準を厳格にしたこともあり、これまで先端医療を牽引してきた米国は09年を通じて厳しさが続くとみていた方がよさそうだ。

 一方、日本は米国と比べるとまだ少しはましな状況とみている。08年に武田薬品工業やエーザイなど日本の製薬大手企業がバイオ企業を数千億円レベルで買収し、2010年問題を控え、将来の勝ち残り戦略においてもバイオ技術およびシーズ獲得の必要性を改めて印象づけた。また業界トップの武田薬品が日本の創薬系バイオベンチャーと契約した影響は大きく、日本の製薬企業が日本のバイオベンチャーの話を聞く姿勢に変化が起こっている。12月中旬に協和発酵キリンの松田社長と面談したが、積極的にいいシーズを取り込む姿勢になんら変化はないと話していた。国も08年11月に先端医療開発特区(スーパー特区)を決め、国として力を入れるテーマ、領域の考え方、方向性を予算付きでこのタイミングで示した意義は高い。政権交代が起こってもぜひ進めていただきたい政策だ。

 ただ、日本ではベンチャーキャピタルのバイオ企業のIPOに関する不信と不満が高まっている。製薬企業との契約や国の予算を獲得できないバイオベンチャーのファイナンス環境の好転は期待しづらい。日本のバイオベンチャーにとって09年は真っ暗闇ではないにしても、ひたすら日の出を求めて山を登り続ける状況に変化はないだろう。アンジェスMGのHGF遺伝子治療薬の08年3月の申請、タカラバイオの自殺遺伝子HSV-TKを利用した白血病治療の臨床試験が08年10月にスタートなど、目に見える進展がぽつぽつと出てきてはいるが、さめたベンチャーキャピタルのマインドを変化させほどのインパクトはなく、独自のビジネスモデルに磨きをかけるとともに、不況対応型の事業計画への修正が求められよう。

 バイオはiPS細胞のように予想もしなかった成果物が出てくる領域なので、予算のバラマキは必要だと思っているが、最重点領域として取り組むべきと考えているのが脳領域だ。特に認知症。高齢化が世界一のスピードで進む日本は、第一次ベビーブーマーが65歳入りを終える2015年頃から老認介護、認認介護の問題がより表面化する。社会の最小単位である家庭の崩壊を招き、2020年頃に日本社会は認知症により崩壊する危険があると予想している。個人的には認知症に関する解決ツールを提供する企業を応援したいと思っている。

 08年も産婦人科の不足により、たらい回しの末に妊婦が亡くなるという悲劇が起こった。バイオの世界でも有望なシーズなどを有しながらも道半ばで消えていく企業が出てきている。また、IPOが叶ったとしても、ミルクも与えられずに栄養失調状態の企業が多い。09年は金融界の“バイオの伝道師”を標榜し、01年にバイオチームを立ち上げた原点に立ち返り、業界レポートや個別レポートを数多く発信し、再び業界に光を当てていきたいと思っている。