2008年は日本のバイオベンチャーにとって、明暗いずれの面でも大きな変化を経験した年だった。

 まず暗い面では、世界的な金融危機の影響だ。世界のバイオベンチャーが資金調達で厳しい対応を迫られた。日本でも上場、未上場を問わず多くの企業が資金確保のために研究テーマの絞込みや経費圧縮を余儀なくされ、経営に行き詰る企業さえも現れた。一方、明るい面では、製薬会社との提携の増加があげられる。特に抗体医薬分野での未上場企業の活躍が目立った。具体的にはリブテック、ワイズセラピューティックス、イーベック、カイオム・バイオサイエンスなどだ。

 とりわけイーベックとドイツBoehringer Ingelheim社との提携は、提携金額のみならず、相手が欧米ビッグファーマだったという点で、日本の多くのバイオ関係者を勇気づけたに違いない。こうして見ると、2008年は日本のバイオベンチャーにとってけっして悲観的な年ではなく、むしろビジネスで成果を上げた歴史的な年だったといえよう。

 日本のバイオベンチャーの歴史は2000年前後のゲノムブームから始まった。しかし、その多くは仮説段階の技術やシーズをベースとしているにすぎず、それを基にしたビジネスは仮説に仮説を積み上げたものだった。こうした経緯から見ると、多くの企業に成功を期待するのは難しく、苦戦を余儀なくされる企業が出てくるのは当然だ。特に成功確率が極めて低い創薬の場合は、なおさらのこと。

 そうした中、日本ではこれまで仮説への期待だけで、バイオベンチャーへの投資が行われてきたわけだが、その結論が出る時期が今まさに訪れたといえる。仮説の立証に成功した企業は製薬会社との提携を実現し、資金的な余裕もでる。しかしそれがうまくいかなかった企業は提携はもとより、ベンチャーキャピタルからの資金も得られず、最悪の場合経営に行き詰るケースもでてくる。昨今、金融危機の影響でバイオベンチャーが厳しい状況に立たされているといわれるが、日本の場合、むしろこうした歴史的な事情のほうが要因として大きいように思われる。

 そうした意味で、これまで事業としての成功事例が少ないといわれた日本のバイオベンチャーの中から、製薬会社との提携に至るモデルケースとなる企業が増えつつあることは大変心強い。08年はそうした期待を膨らませてくれる年だった。

 09年もこうしたビジネスとしての成功事例は増えると予想される。国内外の製薬会社が日本のバイオベンチャーに注目し始めており、バイオベンチャーのほうも着実に仮説を立証しつつあるからだ。08年の事例から見ると、創薬技術でいえば抗体医薬や核酸医薬など、疾患領域では抗がん剤といった分野での提携可能性が高いと考えられる。それらは大手製薬会社が弱点とし、かつ彼らのニーズの高い分野だからだ。

 日本のバイオベンチャーのビジネスが、ゲノムブームから始まった試行錯誤の「仮説の段階」を過ぎ、いよいよ「収益獲得の段階」へとステージを変えつつあるといえよう。

 最後にアナリストとしての立場から09年の抱負を述べたい。ようやく日本のバイオベンチャーにビジネスとしての成功可能性が見えてきた。この流れを加速させ、1社でも多くの成功事例を増やす一助となるよう、具体的な事例研究に基づくタイムリーな情報発信に力を入れたい。またバイオベンチャーが必要な資金を調達するには、投資家による上場バイオベンチャーの正当な評価が不可欠だ。引き続き投資家へ向けた的確かつインパクトのある情報提供に努めたい。