2008年は、イーベックにとって大きな飛躍の一年でした。弊社が開発した治療用完全ヒト抗体プログラムの一つについてドイツのメガファーマであるBoehringer Ingelheim(BI)社とライセンス契約を締結しました。本契約に基づき、BI社に対して、本プログラムの全世界での開発および商業化の独占権を渡しました。弊社は、5500万ユーロ(契約時約88億円)に及ぶ前払い金および開発ステージに応じたマイルストーンペイメントを受け取るほか、発売後は販売実績に応じたロイヤルティを得ることになります。この契約は、日本のバイオベンチャーが欧米のメガファーマとアライアンスを結んだ意味で、日本全体にも明るい話題が提供できたと喜んでおります。

 私は、事業インキュベーション会社であるヒューマン・キャピタル・マネジメント(HCM)を02年に設立し、東証一部上場企業の社内VBから個人事業まで幅広い起業に携わってきましたが、その中で大学発VBも重要な部門として複数インキュベートしてきました。

 大学には優れた技術が蓄積されており、素晴らしい先生が多数おられます。私も先生たちから技術やその技術を使った起業の話を伺いワクワクしたことが多くあります。高田先生と話したときもワクワクしました。大手の製薬企業が大学と共同研究をすることにより技術を世に出していくことも素晴らしいと思いますが、それだけでは地方に技術や事業、雇用の機会は残りません。しかし、地方にVBを創ると技術も雇用も残ります。イーベックも地域にいる素晴らしい研究人材を活用した結果、今回の契約につながりました。

 09年、弊社はラボを移転し拡張することによりさらに雇用を増やします。北海道に住みバイオ技術を持っていて他の業務に従事せざるを得なかった人材あるいは北海道にUターン、移住してくる優秀な人材を活用しステージアップを図ります。名前が知られてくると大都市圏のほうが人材は集めやすいかもしれませんが、アーリーなステージでは、地方に残るあるいは帰ってくる人材を活用することによりバイオVBは飛躍的に伸びる可能性があります。09年も地域から世界に技術が出て行く流れを作っていきたいと思います。

 バイオは一人勝ちがなかなか出来ない業態です。特にベンチャーにとっては大手企業とのアライアンスによる事業化は大きなキーワードになります。イーベックだけでなく、他にも大手企業とのアライアンスによる商品化を行っているバイオVBが複数あり、HCMでも現在手がけています。自社の事業領域を絞り込み、隣の工程を行う有力企業とのアライアンスにより、最終消費者まで届けるルートを作るという戦略は有効です。アライアンスによる事業化はバイオVBにとって成功への近道であり、09年もアライアンス契約を進めます。下請けの関係ではなく、それぞれの会社が自社の「立ち位置」「役割」「権限」を明確にして、それぞれの「立ち位置」「役割」「権限」を尊重しながら組んでいくアライアンスは大手にとってもVBを有効に使えますし、VBも自社の強みを活かし弱みを消す有効な戦略です。09年、パートナーシップに基づくアライアンスはバイオベンチャー成功のキーワードになるでしょう。

 大手と組むには、当然として技術力の向上とともに素材製造業としての品質、生産体制、倫理、安全性など製造工場としての水準が求められるでしょう。厳しいデューデリジェンスに耐えうる素材製造業としての体制を弊社も新ラボ(工場と呼びたいですが)で強化します。バイオベンチャー全体でも製造業としての体制を作れたところがアライアンスにつながっていくのではないでしょうか?