システム生物学の分野では、ハイスループットデータから得られる大量のデータを元にモデルの構築、解析を行うトップダウンアプローチと、特定の生命現象に注目し、それを説明できるモデルの構築を目的とするボトムアップアプローチの2方向からのアプローチがある。

 「生命現象をシステムとして理解する」という共通した目標にもかかわらず両者は相反するアプローチを取るため、時にシステム生物学は単方向のみ(多くの場合、トップダウンアプローチ)の研究と誤解される事がある。また、多くの場合トップダウンアプローチとボトムアップアプローチを融合する事は非常に困難であった。

 しかし近年の測定技術の向上によりこの状況は変わりつつある。分子濃度の時間変化だけでなく、空間的局在や一分子レベルの観測等、高精細、かつ短い時間間隔で測定された実験データが得られることで今までは定性的な表現でしか説明できなかった(もしくは定性的には説明できなかった)生命現象が定量的に説明可能となる。

 上記の様なハイスループット定量データはトップダウンとボトムアップの両アプローチの融合において重要な役割を担う。定量データを効果的に活用する為には、生体内の反応プロセスを正確に記述する為の理論構築、シミュレーションと連動した定量データの解析基盤の開発が必要だと考えている。具体的には、

1. in vivo orientedなモデル記述手法の確立

2. 並列処理技術を活用した超高速シミュレーション、データ解析基盤の構築

を進めていきたい。

1.に関しては、4年前から研究を進めている、細胞内で起こる生化学反応の正確な記述法の構築を行う。細胞内空間はvitroの様に均質な系では無いと考え、細胞内反応空間を組み込んだモデル化について研究を引き続き進めていきたい。

 並列処理技術は、PCクラスタや近年のマルチコアCPU、GPU (Graphics
Processing Unit)などでも採用されている様に極めて一般的となってきている。

 しかし、それらの多くは粗粒度並列処理と呼ばれる、並列化を単純に活用するアプローチを取っている。現在は粗粒度並列処理に向いたアーキテクチャ(デバイス)の方が多く利用されているが、個人的には細粒度並列処理(細かいレベルでの並列処理)に可能性を感じている。

キーワード:定量生物学、細胞内反応空間、細粒度並列処理


※2008年の舟橋啓氏のBTJ記事

舟橋啓・慶大専任講師、開発したツールが世界で人気No.1、トップダウンとボトムアップの重なりでシステムバイオを新展開
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7899/ (記事リンク



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