遺伝子治療の臨床開発では、2008年10月1日に国立がんセンター中央病院で白血病を対象としたHSV-TK遺伝子治療(ドナーリンパ球輸注療法)の治験を開始した。これは日本で初の体外遺伝子治療の治験である。

 一方、がん細胞の特異的がん抗原に対するT細胞受容体(TCR)の遺伝子を、患者のT細胞に導入して行うTCR遺伝子治療研究の第一号は、三重大学でのMAGE-A4を発現する食道がんを対象としたTCR遺伝子治療である。現在、厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会の作業委員会にて審議が行われており、09年度前半にも臨床研究が開始される予定である。このように日本初の体外遺伝子治療の治験開始も含めて09年は「日本の体外遺伝子治療元年」と言える年になりそうである。

 がん細胞免疫治療では、患者のT細胞からがん細胞攻撃の高いナイーブT細胞を増やすことができる、レトロネクチン拡大培養法を中核技術として臨床開発を進めている。08年1月に中国の天津医科大学・天津市腫瘍病院にて、08年3月には三重大学医学部付属病院にて同法を用いたがん細胞免疫療法の臨床研究が開始された。また中国広州の中山大学及び京都府立医科大学でもレトロネクチン拡大培養法を用いたがん細胞免疫療法の臨床研究の準備を進めている。一方、中国医学科学院がん病院(北京)との腎がんを対象とした細胞免疫療法の開発プロジェクトは、治験開始の許可を、今か今かと待っている状況である。

 世界でのレトロウイルスベクターを用いた遺伝子治療の臨床試験が徐々に増加しており、当社が、高効率遺伝子導入法であるレトロネクチン法のライセンスを供与している医療機関数は、世界で45となった。

 以上述べたように、2009年は遺伝子治療・細胞医療が商業化に向けて、第一歩のスタートを切る重要な1年になると考えている。