2008年のノーベル化学賞が「緑色蛍光蛋白質GFPの発見と開発」に対して贈られました。多くの生物科学研究室でGFPは日常的に使われており、脳神経細胞をはじめ様々な細胞や蛋白質を可視化することは生物科学を大きく進展させました。また、二光子励起顕微鏡に代表される機器と蛍光蛋白質を組み合わせることによって、生体(例えば生きた個体の脳)内の分子や細胞の動きをリアルタイムに可視化できるようになってきました。

 2009年は、こうした「光」を用いたイメージング法による解析が一段と大きな進展を見せるものと思います。加えて、いくつか明らかになっている光活性化蛋白質を強制発現させて、その細胞に光照射することによって神経細胞などの細胞機能を人為的にコントロールことが可能なってきます。こうした研究も大きく進展するものと期待されます。

 光科学の進展は目を見張るものがありますが、光を感じる分子メカニズムをはじめ「感覚」の分子機構の解明も近年目覚ましい進歩をとげた研究分野の一つです。しかしながら、いわゆる物理刺激の受容機構は未だ明らかでないものが多くあります。受容分子や受容機構が最も明らかになっていないのは、機械刺激受容です。

 その受容を一つの分子で担うことができないことが一因とは思いますが、2009年にその一部でも明らかになってほしいものだと願っています。温度受容は感覚神経での温度受容分子の発見から10年を経て多くのことが分かってきましたが、哺乳類とショウジョウバエを除いた生物では分子すら明らかになっていません。温度を感じることは全ての生物にとって最も基本的な機能の一つであり、生物の生存応答に関わってきます。

 2009年、温度受容分子の研究が多くの生物種に及ぶことによって、それら生物の生理機能の理解がさらに進むものと期待しています。個人的に、その研究にいくらかでも貢献できればと思っています。

2009年のキーワード:変革、こころ、平和


※2008年の富永教授のBTJ記事

「TRPV1に続き、TRPA1のアンタゴニストの開発も始まった」と岡崎統合バイオセの富永教授、9種類のTRPのKOマウス整備
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7714/(記事1

写真更新、生理学研究所の富永教授ら、アルカリ性物質を痛みとして感じるメカニズムを発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/7627/(記事2

生理学研究所など、ショウジョウバエのPainlessたんぱく質が42℃以上の熱を感知することを発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2005/6359/(記事3


+BTJJ+