昨年も同じキーワードで展望と抱負を語ったが、1年を振り返ると経済構造に世界的規模で予想以上の激震が走り、あらゆる業界でより大きな変化に対してより迅速な対応が求められてきている。

 「GDPの16%が医療費に割かれ、薬価を上げる事で売り上げを伸ばせる構造を取っている米国が何時までも業界のモデルでいられるとは考えがたい。」と昨年述べておいたが、昨今益々その様相が強まった。医療経済の視点が更に重要視されて来るのは必然であり、既存の枠内で利益の最大化を目指すと言うような単純なやり方は通用しなくなるのではないかと思う。新薬開発が極めて投機性の高いものとなり、重厚長大なビッグファルマモデルが崩壊したのは既知の事実であり、それを真似ただけのバイオにも明るい未来は無いだろう。本年度は業界自体が以下のような方向で地殻変動を起こして様変わりする局面にあるのではないかと考える。

旧来モデルの特徴:
 中央集権・閉鎖的・高薬価/ブロックバスター追求・高額及び長期間の開発・化合物及び作用機序の新規性価値への盲信・低い成功確率・貪欲・競争原理主体

新規モデルの特徴:
 多分野にわたる協力・オープンソース・疾患の再定義と広範な治療法の提供・効率良い開発・経験則に基づく医療ニーズの重視・短期利益を越えた企業の社会的責任の追求・協調原理主体

 既に、政府レベル(NIH Roadmap&s_comma; Critical Path、医療特区等 )、大手製薬企業レベル(Enlight、開発途上国向けの新薬開発、後発医薬品への進出等)でも新規モデルを目指した動きがあり、バイオ業界に限っても、CollabRx、 Mondobiotech、 FasterCures等新しいタイプの企業が生まれて来ている。

 社会的・精神的構造が大きく異なる欧米の真似をして日本で投機性の高いやり方をするのは間違っている。昨年、「効率良く機能している日本の医療制度にもっと自信を持って欧米に喧伝すべきであろう。このシステム分析の過程から世界をリードする新たなビジネスモデルが生まれてくる予感もする。」とも書いたが、リスクが低減した環境下では日本が得意とする高品質の製品・制度をより効率良く生み出せるようになると確信している。原点は、製造する側からのシーズの押し付けではなく、最終的消費者(=患者)のニーズが的確に反映されるような医療制度でなければならない。

 当社は、環境変化に迅速に対応した柔軟かつ確固とした経営方針で、時々適々にひたすらビジネスモデルを改良し続けて行きたい。激動の時代は淘汰圧が強く、ベンチャー精神が試される最良の機会である。既存の権威が崩壊して一部で「集団の叡知=文殊の知恵」が取り沙汰されているが、これを安直に捉えて集団思考の衆愚に堕してしまってはならない。絶えず思考を鍛えて、時代に一歩先んじた手を打って行きたい。