昨年2008年は散々な1年間ではなかったかと思います。アメリカに端を発するサブプライム問題が引き金となり、原油高、リーマンブラザーズショック、その果てには世界的な経済恐慌と円高。そのような荒波の中、新規株式上場は激減し、世界中で企業の資金調達難が蔓延してしまいました。日本でも多くの新興バイオ企業は慢性的な資金難に襲われ、新規パイプラインの導入はもとより、既存のパイプラインの進捗すらままならない状況が続きました。その一方で、製薬大企業は2010年問題をひかえてバイオ企業からのパイプライン導入やM&Aを積極的に行い、開発スピードをより一層速めています。また、アメリカのバイオ企業でも、しっかりとしたパイプラインを持ち着実な開発進捗を遂げている会社は資金調達も成功させています。

 2009年の経済がどのようになり、バイオ産業が発展してゆくかどうかは神のみぞ知るところでしょう。しかし、昨年前半にはいくつかのバイオ企業のIPOが成され、後半にはバイオ企業が厚生労働省からの新薬承認にまでこぎつけたり、新適応を取得したり、或いは大手製薬企業とのアライアンス契約を成功させたりする事例が増えてきています。これは我々バイオ産業界にとって非常に喜ばしいことであり、勇気付けられる事実だと考えています。日本のバイオ産業が徐々にではありますが前進を遂げ、成熟した欧米のバイオ産業に一歩近づいた証左ではないかと考えています。このような状況は更に今年も続き、これまで蓄積された経験が成果に変わるときが来るのではないかと予感しています。現在の円高傾向は悲観ばかりではなく、海外で開発を進めようとしているバイオ企業にとってはむしろ有利に働くものと考えています。また、IPOはもはやバイオ企業の唯一の出口ではなくなっていることも事実でしょう。

 世界が不景気の波に飲まれても、病気で苦しんでいる患者さんは世界にあふれています。癌やエイズを撲滅するためには、まだ人類は程遠いところに居るようです。我々バイオ産業界は大手製薬企業に出来ないようなイノベーションをこの世界にもたらす事にあると思います。目先の景気の停滞による資金難を声高に嘆いているより、しっかりと自社のコアコンピータンスを見極め、もっと先にある我々のゴール、即ち良い医薬品をいち早く世に出すこと、というゴールを今一度しっかりと見定めるときがやって来たのではないでしょうか。

 2009年が日本のバイオ産業の発展にとって大きな足跡であったと記憶されるような一年となることを、心から祈っています。