新しい年は、新しい希望を持って迎えたいと誰しもが願うものです。しかし、昨夏以降、サブプライムローンに端を発した世界的な景気の急激な落ち込み中で、明るい希望を見いだすのは難しいものかも知れません。今回の危機は、図らずしも持続的発展の困難さを証明したものとなりました。直面する様々な問題を解決することが必要なことは言うまでもありませんが、このような事態だからこそ将来にわたって持続可能な社会を形成するためにどのような社会的投資をすべきか、戦略を立てることが求められています。また戦略の有無が国の命運を左右する事になります。

 「健康」「環境」「食料」は人類共通の課題であると同時に、天然資源の少ない我が国にとって大きな可能性を含んでいます。これらの課題の解決が、結局、国の繁栄を決定することになりますが、ライフサイエンスを中心にした科学技術の発展を抜きにその解決は望めません。科学技術の発展には、人、施設整備、研究材料といった基盤整備が不可欠です。2009年度予算の政府原案は厳しい経済情勢の中、1.1%増としており評価されるべきと考えられますが、厳しい国際競争を鑑みれば将来を見据えた基盤整備への投資が拡充されることが望まれます。

 さて、米国では1月にはオバマ大統領が就任し、「Change」の実現に向けて様々な政策を展開することが予想されます。既にオバマ氏は科学技術への重点投資、理科教育の強化と予算措置を明言しています。また、前政権では厳しく制限されてきたES細胞研究が、再生医療研究へと大きく躍進することが期待されています。欧州連合でもイフンラフロティアと呼ばれる基盤整備に重点投資を行って、明日のEUを築こうとしています。お隣の中国では、欧米で教育された自国の研究者を呼び戻し優れた研究環境を与えるとともに、インフラ整備にも巨額の投資を行っています。また韓国でも基盤整備を開始しました。メガファーマが中国に拠点を構築し、日本抜きで欧米中で活動しようとしていること、また、既にしていることに危機感を覚えるのは筆者一人だけではないと考えます。

 やはり、今日の科学技術、基盤整備への投資が我が国の立場を確固たるものとし、また未来を拓くことにつながります。昨年四人の日本人が一度にノーベル賞を受賞したこと(お一人は米国籍でしたが)やiPS細胞が再生医療研究の大きな展開を見せている等、嬉しいニュースも多くありました。今年も基盤整備が着実に前進し、最先端の研究開発が開花し、ともすれば不透明感が漂う中で一筋の光をさしてくれることを望み、期待しています。


+BTJJ+