あけましておめでとうございます。

 昨年は、07年末のヒトiPS細胞の樹立の熱がどんどん上がる中で明けました。09年は、iPS細胞をはじめとする幹細胞・再生医学の研究をさらに加速していきます。国際的な協力と競争が行われ、また、多くの人たちが注目しています。患者さんのiPS細胞を樹立し、疾患に関連する細胞を作成して、病気のメカニズムを研究するなど、より幅広い研究が行われるようにするとともに、iPS細胞の標準化を進めるなどいわゆるプラットフォームを整備します。また、知財の体制も強化します。幹細胞に強い知財専門家は数少ないと思います。産業界や世界の知恵を求めていくことが必要です。

 また、私たちは、大臣からの諮問を受けて、脳科学研究の在り方について検討をしています。脳科学は、私たち自身を理解するための科学的な基盤を与えるとともに、うつ病や認知症などの精神神経疾患の仕組みの解明や治療法の開発にもつながるなど、非常に重要で人々の関心の高い分野です。今年は、人と人との関係で脳がどのように働くかという研究などを充実させます。もちろん、脳の研究に当たって倫理的配慮は必須です。脳神経倫理学と呼ぶかどうかは別にして、どのような問題があるのか、そして現実的にどう解決していくのかが重要です。

 最近従来の概念を越える高性能のシーケンサーが現れており、ライフサイエンス研究の手法に大きな影響を与えています。このシーケンサーを使って、ゲノムの解析を強力に進めて、従来では見えなかったものが見えてくることを期待しています。こうした技術と合わせて、システムバイオロジーや合成生物学が発展していくことになるでしょう。また、医療にも大きな影響を及ぼすことになると思います。

 実験室で得られる多くの知見をどのように私たちの生活に活かしていくか。橋渡し研究や臨床研究を強化していきます。私たちがお世話になる医薬品は、基礎研究から応用研究まで膨大な研究の成果の上にできあがっています。基礎研究から臨床研究までの流れをスムーズに進めるための支援をしていきたいと思います。

 ライフサイエンス研究としてどのようなことをしているのか、どのように役立っているのか、どんな問題があるのか、などについて、専門家と一般の方との「サイエンス・コミュニケーション」が益々重要になると思います。

 現職について約2年がたちました。ライフサイエンスの研究者は、他分野の研究者と協力したり、大きなプロジェクトを作ることが苦手なように思います。近年研究の手法が大きく変わってきており、小さな研究室でこつこつと実験をすることだけではなく、多数のチームが参加して高額の研究費が使われる大規模なプロジェクト的な研究も多くなっています。こうした研究を国際的な水準で行えるように、円滑な協力と厳しい相互評価が必要です。

 ライフサイエンスは、これからの我が国にとっても、世界にとっても大変重要な分野です。多くの人々の理解を得つつ、強力に進めていきたいと思います。


+BTJJ+