2008年10月に発足した協和発酵キリンは、「抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使して、日本発のグローバル・スペシャリティーファーマになる」というビジョンを掲げ、統合シナジーの創出に邁進しています。幸いにも初期のパイプラインは非常に充実してきており、09年は、着実にそれらの進展を図っていくことが重要な1年となります。

 医薬品業界全体に目を向けると、09年は、他の産業同様、米国の動向が最大の関心事と考えます。米国発の経済危機の直接的な影響は比較的少ない業界でしょうが、オバマ新政権が抱え込む財政赤字と医療費削減の問題は不可分であり、米国がこれまでのように魅力ある市場であり続けるか注視していくことが必要でしょう。

 また、医薬品の安全性に関する昨今の米食品医薬品局(FDA)の極めて慎重な姿勢は、新薬メーカーの経営を圧迫するリスクがあります。一方で、ブロックバスター薬の特許切れ問題、景気後退に伴うベンチャー企業の資金繰りの問題、グローバル治験の拡大などに絡んで、メガファーマがこれまで取ってきた戦略をどう変えていくのか、医薬品業界にとっては注視すべき点です。国内大手も、M&A戦略は一巡したかもしれませんが、円高の環境でさらなる動きが出てくる可能性もあるでしょう。

 創薬に関して言えば、がんや神経疾患へのシフト、抗体医薬への注力などここ数年の傾向から、核酸医薬や再生医療など新しい技術を応用した新たな挑戦が拡大していくことになると考えられます。バイオシミラーについても、医療費抑制の問題と絡んで米国がいつまでも埒外にいる訳には行かなくなってくると思われ、新たな展開が予想されます。

 このような環境の下でも、協和発酵キリンは、国内の営業基盤の強化により既存製品の拡大を図ると共に、抗体医薬を中心にグローバル開発を加速させる方針に変更はありません。研究開発型と呼ばれるにふさわしいように、新たな創薬技術の開発も継続して手掛けていきます。グローバルプレーヤーとなるにはまだ十分な規模ではないことから、強みのあるところに研究開発資源を集中させることはもちろん、外部の力も積極的に活用しながら、如何に効果的に開発を進めていくかを最大の経営課題として力を結集させていきます。

 統合前から、協和発酵、キリンファーマ両社の多数の社員が参加する形で、新会社の理念とも言うべき私達が大切にしたい価値や使命を言葉として創り上げてきたものが、まもなく完成します。混乱の時代、いやこのような時代だからこそ、医薬品メーカーとしての志を忘れず、革新的な技術にこだわり、注目される存在として今年も駆け抜けていきたいと思っています。