昨年11月10、11日に山形県鶴岡市の慶應大先端生命科学研究所で国内初となるメタボロームシンポジウムが開催された。メタボロームへの注目度の高まりからある程度予想はしていたが、東北の地方都市にかかわらず定員120名を大幅に越える180名の参加者があった(首都圏であれば数百人だったかもしれない)。内訳は、大学、研究機関以外にも企業からの出席者が多く、驚いたことに国内にあるほとんどすべての製薬会社から参加者が集まった。

 通常、学会の後半は人がどんどん減って行くものだが、最後の講演まで立ち見状態が続く、熱気のあるシンポジウムであった。各演者の講演内容がチャレンジングで魅力的だったことも事実だが、製薬会社をはじめとする民間企業がメタボローム研究に熱い視線と大きな期待を寄せていることも大きな理由の一つであろう。

 これまで私は慶大先端生命研およびヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT社)の一員として、学会等でメタボローム研究の有用性を度々訴えて来たが、ある時を境に製薬会社から講演依頼や問い合わせが急増した。それは、私たちと慶應医学部の共同研究によってアセトアミノフェン肝障害のバイオマーカーが発見されたこと(関連記事1)や千葉大学の斎藤和季教授の論文が植物バイオ分野で引用数トップに輝いたことがメディアで報じられた頃からである(関連記事2)。

 それ以来、毎月数回、医薬関連の学会や製薬会社からメタボロームの講演を依頼された。講演後の質疑応答が1時間に及ぶことも珍しくなく、各企業がメタボローム解析への高い関心を持っていることが伝わってきた。実際にHMT社は、幾つかの企業とメタボロームの共同研究や受託分析を開始し、新規バイオマーカーの発見や薬物動態や疾患の機序の解明に実績を残すようになった。また共同研究先の味の素?発酵技術研究所研究企画室室長の臼井直規氏から、今では多くの部署でメタボローム解析を取り入れていると聞くようになった。

 最近HMT社への引き合いや問い合わせが急増していることから考えても、私は今年、製薬企業を中心にメタボローム研究のブームが到来すると予測する。HMT社は今年早々に、外資系を含めた何社かの製薬会社と新たに共同研究や受託分析を開始する。これらの研究から大きな成果が出れば、メタボローム研究は一気にブレイクするであろう。

 トランスクリプトームやプロテオームによる遺伝子やタンパク質のバイオマーカーの探索が世界中で行われているが、残念ながら成果はほとんど出ていない。私たちが開発したキャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計(CE-TOFMS)法によるメタボローム測定法は低分子バイオマーカー探索の新兵器である。この方法論によりバイオマーカーが次々と発見され、日本が特許を独占できれば、開発者として望外の喜びである。

※2007年のキーワード
メタボローム
バイオマーカー
製薬

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2007年新春展望特集


+メタボローム+オピニオン++++