さまざまな地球環境にはそれぞれの環境条件に適応した微生物群集(叢)が棲息している。これら微生物叢から分離された各微生物の生物特性は、発酵食品や有用物質等の生産、工場廃水中の有害物質の分解など、私たちの社会に多くの恩恵をもたらしている。しかし、私たちが知っている微生物は地球上の全微生物の1%にも満たないと言われている。そのため、残された膨大未知な地殻表層、深海を含めた海洋、河川水、ヒトや動植物体内、さらには大気に至る各生物圏に棲息する微生物叢構造の解明は今後の課題となる(関連記事1関連記事2)。

 このような全地球的な環境微生物の解明は、今日のDNAシークエンス技術とゲノム解析技術(メタゲノム解析)の進歩により可能となってきた。個々の微生物の分離培養に依らないメタゲノム解析は、難培養性微生物がもつ新規な遺伝子や物質の発掘だけでなく、微生物共生系としての機能機序や地球規模の物質代謝と循環のメカニズム等を解き明かす糸口となる。

 これらの情報は医療、エネルギー、食糧、環境等の幅広い産業および学問分野において、これまでをはるかに凌駕したバイオ資源になると期待できる。また、そこに含まれる遺伝子の数は億単位となるため、情報生命科学のさらなる高度化も促す。今日の多様な環境微生物がもつ生命システムは他の生物を含めた地球全体との共存の中で持続されてきた。つまり、さまざまな環境微生物を解明する環境ゲノム研究は生物と環境の共存とその持続に対してあらたな科学的智慧を提供する。

※2007年の3つのキーワード
環境ゲノム
メタゲノム
環境データベース

※服部教授のインタビュー記事を掲載したBTJジャーナル06年9月号は無料でダウンロードできます。

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http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/pdf/btjjn0609.pdf


2007年新春展望特集


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