日本で最初に研究者の契約制と、研究の外部評価を完全導入した当研究所も創立20周年を迎える。この間、多くの独創的な研究が行われ、多数の研究者が世界に羽ばたいた。

 当研究所で育まれて来た「睡眠物質の研究」も、まさに世界に誇れる研究の一つであり、今まさに結実の時を迎えている。睡眠物質は1909年に石森国臣教授により世界で最初にその存在が予言され、以来、日本のお家芸として進められてきた。

 一昨年、昨年と立て続けに、我々はアデノシンとプロスタグランジンD2という2種類の物質が、我々の自然な眠りを司ることを遺伝子操作マウスと薬理学的な手法を用いて証明した。ほぼ1世紀にわたる謎がついに解かれるのである。

 世界中の研究者が、これらの物質による睡眠覚醒調節の最終的な証明のために協力してくれている。総勢30名を越えた当部門の研究者や技術員も、日々眼を輝かせて新たな謎に挑戦している。今年も、昨年同様、世界を飛び回る忙しい日々が続きそうである(関連記事)。

 一方、生活の夜型化や24時間社会化が進み、国民の睡眠に関する関心が高まり、様々な快眠ビジネスが活況を帯びている。しかし、その多くは科学的根拠が希薄であり、我々科学者が首を傾げたくなるものも多い。ヒトや動物の睡眠は脳波を測定することで正確に判定できる。我々は遺伝子操作に使う小さなハツカネズミの脳波をデジタル記録し、彼らの睡眠を正確に判定するソフトウェアーを開発した。このシステムを応用して、様々な食材やハーブから我々の眠りを調節する素材を探索する研究を、多くの食品飲料メーカーが進めている。

 また、自宅や旅先で自分の脳波を簡単に測定し、睡眠を正確に測定する睡眠計の開発も進んでいる。今年は、これらの研究の成果である「快眠食」、「お目覚め飲料」、「ポケット睡眠計」が実用化の段階を迎える。

 今までの基礎研究への支援に応える社会還元の一つとして、これらの開発への協力も惜しまない積もりである。それには科学者としての意地もある。私は、基礎研究を極限まで追求することが、応用研究のための揺るぎない基盤を作ることに繋がると信じている。我々の研究スタイルがその実例だと自負している。

 国内の様々な目的達成型の大型プロジェクトや産学連携ベンチャーが海外では冷ややかな眼で見られているのを知ると悲しくなる。日本にも骨のある本物の科学者がいることを世界に知らせたいと思う。これが私の今年の抱負であり戒めでもある。

※2007年に注目している3つのキーワード
科学的根拠に基づく快眠ビジネス
快眠食
簡易型睡眠計

※裏出研究部長インタビュー記事を掲載したBTJジャーナル06年12月号は無料でダウンロードできます。

BTJジャーナル06年12月号の直接ダウンロードはこちらから(約25.3MB)
http://biotech.nikkeibp.co.jp/btjjn/pdf/btjjn0608.pdf


2007年新春展望特集


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