総合科学技術会議、内閣府、関係省庁(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)、科学技術振興機構(JST)などでの2006年中の議論により、わが国においてトランスレーショナル研究(以下TR)を強力に推進していくことが決まりました。
 12月には財務省から文部科学省に対して15億円の予算が決定され(概算要求は30億円)、国内の大学8ヶ所(5-10)程度に拠点としてのTR支援部門が設置される予定となっています。
 しかし、本当に本邦で近い将来TRは結実するのでしょうか?今のままでは、答えはノーです。
 主な理由は5点あります。
 (1)日本に本当に開発すべきシーズが大量にあるのかわからず、積極的な調査は必要であるが困難、(2)日本に複数のTR支援部門はいらず、選択と集中によって1、2か所もあれば十分ではないか、分散は逆効果である(3)研究者におけるTR推進の意識において、本件が基礎研究そのものではなくシーズの臨床応用という「一大事業」である、という概念の欠如はいまだに存在する(4)TRの中心段階である臨床試験に対する公的資金の弾力的な運用制度、進捗状況の管理方法や水準が存在しない(ファンディングエージェンシーとしてのNIHが存在しない)(5)日本にはIND制度、IDE制度が存在せず、医薬品、生物製剤、医療機器の開発において研究的診療と治験も一元化した形での科学的審査制度、法整備を備えたFDAは存在しないというような懸念事項があります。
 ただ、基礎研究の成果を臨床の現場、社会に還元するという基本的方針がこれだけ強力に国からうちだされたというのは画期的なことであり、ここから先は科学技術行政というよりも医療福祉・医薬品許認可行政、臨床試験関連の実際的な研究費制度、そして聖域であったわが国の医療保険制度のあり方について、国民の選択として真剣に考えるという議論にも結びついていくと考えています。

2007年新春展望特集


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