バイオインフォマティクス及びシステムバイオロジーが今後の生命科学研究・ バイオテクノロジー開発の多くの局面で必須のものになってきたことは申し 上げるまでもありませんが、この重要性は日毎にまた年を追って増大して行くでしょう。
 いずれも相当以前からあったものですが、ゲノム・ポスト ゲノムの大きな流れの中で発展して来たものです。
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 1995年世界で初めてのゲノム解読(インフルエンザ菌)が解読された時にバイオインフォマティクスの重要性が世界に示され、その後の10数年ゲノム・
ポストゲノムの膨大な情報創出と共にバイオインフォマティクスはあらゆる研究の局面に必須のものとなってきました。
2000年ヒトゲノムドラフト配列解読とポストゲノムへの急速な展開が始まった と同時に、システムバイオロジーの重要性が指摘され、それ以降各種の施策・ センター設立・人材育成などが活発化しました。そしてその成果の発表が世界的に急増を始めました。
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 そのような中で、現在進行中の世界の動きとの関連を展望してみましょう。

1.ゲノムシーケンス解読
 ゲノムシーケンス解読は現在も猛烈な勢いで進んでいます。ヒト及びヒト近縁、動物、植物、微生物と、数千種類の解読が進んでおり、そのデータ量の増大は気の遠くなるようなものが予想されます。シーケンシングコストの急速な低下がこの勢いに拍車をかけています。
 これらのデータから、比較ゲノム、個人差解明、未知遺伝子発見など様々なバイオインフォマティクス研究が、更に大規模に進むでしょう。
 加えて、メタゲノミクスの動きが大きくなっていくものと思われます。
 すでに、腸内細菌群の網羅的ゲノム解析の結果が発表されましたし、今後コミュニティーゲノムという研究が必要になってくるでしょう。

2.ゲノムネットワークシステム
 米国では、ゲノム上に書かれている遺伝子群とそれらの制御領域の機能を理解しようとするENCODEプロジェクトが第1期パイロットフェイズ(2003-) から、第2期(2007-)に向けて新募集が始まっています。
 日本では、RNA群とタンパク質群が織りなす遺伝子制御ネットワークシステムを解明しようとするゲノムネットワークプロジェクト(GNP)が走っています。これはシステムバイオロジー的なアプローチを取っています。
 これら二つは3C (Complementary&s_comma; Collaborative and Competitive&s_comma; 補完・協調・競争)の関係にあり、ここ数年での大きな進歩が見込まれます。

3.タンパク質構造ゲノミクス
 タンパク質構造解析の面で、日本は以前に比べ近年、世界的に大きな存在感を持つようになってきました。タンパク3000プロジェクトの国際貢献(Nature in press)、電顕によるアクアポリン系の解析、「生体分子と水」の解析グループの活動、最近のCASP(立体構造予測コンペ)での活躍など、目を見張るものがあります。ただ、米国ではPSI(Protein Structure Initiative)が2期に入りましたし、EU では統合構造生物学の計画が本年から始まります。

4.システムバイオロジー
 ここ1~2年で、システムバイオロジーのセンターが米国で7つ、英国で6つ、相次いで設立されました。ドイツでは肝臓細胞に特化したシステム
 バイオロジープロジェクトの研究拠点が張り巡らされています。このような広がりで対象毎のシステム解明が進むだけでなく、研究を通しての人材育成
 が急速に進むでしょう。数年先へのインパクトが大きいと思います。
 日本では次期スパコン計画に一部組み込まれていますが、更に系統的な施策が望まれます。
 
5.バイオデータベース
 米国NCBIの拡張(400人超)についで&s_comma; 欧州EBIが急速に拡大することが、 今年から始まるFP-7で決定しました。このような巨大データベースセンターの活動と、多様なデータベースの分散管理とが、今後有機的なつながりの良い共存関係で、バイオ研究者に提供されることになるでしょう。
 特に最近発表されたdbGaPのようなクリニカル情報との連携が重視されるでしょう。
 このような中で、日本の誇る代謝パスウエイデータベース(KEGG)、マウス・ヒトのcDNAデータベース(FANTOM&s_comma; H-InvDB)やオミックス解析ツール(OmicBrowse)などを含め、日本のバイオデータベースのあり方が今後の 課題でしょう。
 
6.インドのバイオインフォマティクス力
 インドはすでに欧米のバイオインフォマティクス研究において枢要な位置を占め始めております。日本がインドとどう付き合っていくか今後の大きな課題でしょう。


2007年新春展望特集



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