2007年は、ヒトES細胞の実用化に向けた研究が飛躍的に発展する年であると、 少しは願望が混じりながらも、確信しています。
 期待されるマイルストーンとしてい くつか列挙します。
 (1)臨床応用や厳密な研究に必要となる動物成分フリーで完全 合成培地によるヒトES細胞株の樹立と長期培養を可能にする培養技術を確立するため に、国際的連携研究(International Stem Cell Initiative 2)が始まり京大再生研も積極的に参加する予定です。ちなみにInitiative 1は、世界各国の14研究室で樹 立されたヒトES細胞株の特性解析比較研究でしたが、新年早々に解析結果が公表され る予定です。
 (2)ヒトES細胞を用いた難病治療(急性期脊髄損傷)の臨床試験が米 国でGeron社などによって開始されることがほぼ確実となっています。
 (3)細胞治 療における免疫拒絶の問題を解決するための現実的な手段として、ドナー特異的な免疫寛容誘導が世界的に注目されています。その中でも本命と思われるのが、制御性T細胞を利用した寛容誘導手法で、京大再生研の坂口志文教授によれば動物実験ではすでに成功しているとのことですので、臨床応用を目指した早急な進展を期待したい と思います。
 (4)ヒトES細胞の重要な活用分野として創薬試験研究がありますが、世界の巨大創薬企業が静かに乗り出していることは確実です。国内では経済産業省予 算によるNEDOプロジェクト(創薬のためのモデル細胞創出)が05年度から開始して、私自身がプロジェクトリーダーを務めています。
 これまでに、ES細胞から作った 心筋細胞の活動を多電極マイクロデバイスによってリアルタイムで解析するシステム がほぼ出来上がり、QT延長などの心筋毒性を新薬候補化合物について評価できる新た な解析系ができました。さらに神経変性疾患モデル細胞などの創出を目指しています。


2007年新春展望特集


+細胞工学+オピニオン+++