「今ある科学技術を最大限に生かして、人の命を救う」という言葉の響きは美しい。しかし、未来のこと、その新しい一歩が何を生み、次の世代に何を負わせるのかを考える必要がある。医療や医学・生物学研の多く領域でこの問いが突きつけられている。

 このような状況は、医学・生物学が進歩をして、法や指針による規制が追いつけなっている現状と考えることができる。しかし、私たちはここで、より根源的な問題へと戻らなければならない。

 それは、「私たちは、どんな世界に住みたいのか?」「私たちは、どんな世界を次の世代に引渡したいのか?」、そしてそのような思いから、「今の私は何ができるか?」という問いである。これは、未来の顔も知らぬ彼等のために、今の私ができることは何なのかを問うことである。

 初めて子供が生まれるときに、子供に伝えたいことを考えた。ひとつは「自分を笑い飛ばすエネルギー」、また「ひとつのことを多方面から観て、自分がやっていることを位置づける力」である。そんな話を、フランスの研究者としていたら、「僕ならもうひとつ加える」といって「すべては人がすることだ」というのである。そして、「人」をどう考えるかによって、先に述べた2つは導きだされる。

 私がゲノム研究・ゲノム情報の利用の問題を考え続けているのは、ゲノム情報が「私のものであって、私だけのものではない」という性質を持つからである。一人々をぶつぶつ切り離す「究極の個人情報」としてではなく、時制と人称の違い-先に述べた「未来の彼ら」と「今の私」-を結ぶものとしてのゲノム情報に、私は希望を見ているのだ。

 「私に今何ができるのか」という問いを持ち臨む2007年を思う。


2007年新春展望特集


+オピニオン+倫理+先端ゲノム++