安倍首相の方針で、2025年までを視野に入れた成長に貢献する指針を作る「イノベーション25戦略会議」が始まり、第1回会議で首相が引用したのが、1901(明治34)年の正月に報知新聞(読売新聞の前身)が掲載した「二十世紀の豫言」です。

 この予言は7割近くが実現しています。例えば、世界中の人にテレビ電話ができ、鉄道が5大陸をつなぎ、東京・神戸間を2時間半で走る列車ができ、7日間で世界一周ができ、天災は1カ月以前に予測が可能となる、などです。無教育の人がいなくなる、人の身長が180cm以上になる、人間の敵である野獣が滅亡する、などの夢からは人々の生活や考え方がよく分かります。

 当時は公衆衛生も医療も不十分で、乳幼児の死亡率が高く、平均寿命は約45歳、現在のアフリカの貧しい国と同程度でした。だから、蚊と蚤が滅亡し、医術が大きく発達する、という夢は切実だったでしょう。冷蔵庫も保存料もない時代に食品衛生も不十分だったのですが、にもかかわらず、食品の安全に関する夢は何もありません。それは、食材の購入から調理まですべて自己責任でやっていたためでしょう。

 「犬や猫と自由に会話できる」ことまで夢見た想像力豊かな明治の人でさえ考えなかったのが、食品の大量生産・大量消費時代の到来、そして平均寿命が世界一の約80歳に達することでした。

 しかし、食品の安全を守る責任が食品関連企業に移ると、自己責任なら許容できるリスクでも、他者の責任なら許容できないという心理状態が働き、食品の安全は世界一のレベルに達しているにもかかわらず、食に対する不安が拡大しました。

 そんな背景から、私はイノベーション25に次のような夢を提案しました。「遺伝子改変食品を含めた多くの食品の安全性について、人々の間でレギュラトリーサイエンス(「学究の科学」に対する「規制の科学」の意、政策決定のための科学的な情報収集や議論)の認知度が上がり、リスクコミュニケーションが確立して、科学的知識や的確な判断力が大きく向上し、コンセンサスが得られている」。

 これを単なる夢物語に終わらせないために、今年も努力を続けたいと思います。


2007年新春展望特集


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