2005年暮れ、新聞やテレビの「05年の回顧録」的な企画では、「景気回復」の文字が飛び交っていました。その流れを受けて始まった06年には、久しぶりに賃上げ春闘が行われるとのことで、個人消費に牽引される形でまだまだ好景気は続きそうです。

 では、バイオビジネスはどうかというと、そんな景気のいい話ばかりではありません。日経バイオ年鑑を製作する際に調べたところ、05年の国内バイオ市場は、04年に比べて拡大こそしましたが、その伸び率は2.2%と、例年より低い水準にとどまりました(この内容は、日経バイオテク1月16日号で紹介する予定です)。国内の株式市場に上場するバイオベンチャーの企業価値のトレンドを把握するために算出している日経BP・バイオINDEXは、05年6月以降、ずっと600台で推移しています(2004年4月1日を1000とした指標)。日経平均や東証TOPIX、マザーズ指数などの株価指数はいずれも年末にかけて力強く上昇しましたが、バイオ株だけを取り出してみると、別の世界に取り残されているかのような印象を受けます。

 2004年に国立大学法人が発足して以来、研究機器、試薬、研究支援サービスの市場は停滞が続いています。再生医療や細胞医療などの先進的な取り組みは、なかなか次のステップに駒を進められないでいます。こうした現状を見ると、バイオビジネスは世の中の好況ムードとは一線を画したところで、まだまだ奮闘を続けなければならないと痛感させられます。

 しかし一方で、健康や医療と密接なかかわりを持つバイオビジネスが、将来に向けた数少ない成長分野であるのは確かです。しかも、電機、機械、情報技術(IT)などの異分野との技術融合が、新たな技術革新をもたらすと期待されている分野です。実際、トヨタ自動車やキヤノン、東レなどの例を挙げるまでもなく、電機、機械、IT企業の中には、バイオ分野に積極的に投資する動きも目立ちます。

 日本企業全体の業績拡大傾向が続くと見られる06年は、バイオ投資に乗り出す企業の裾野は広がり、投下される資金の総額も膨れ上がるに違いありません。ナノバイオや分子イメージング、RNAワールドなど、異分野との技術融合や、技術革新のために投資を必要としている分野は数多くあります。また、バイオベンチャーに対する投資の状況はというと、04年初頭には新規上場企業に投資家のお金が舞い込んで、若干バブル気味になりましたが、その後、全体的に低調に推移した結果、未上場のベンチャーも含めて、今、むしろ投資を受けやすい水準になっていると思われます。

 以上の状況から察するに、06年は異分野の産業からのバイオ投資が拡大し、新しい技術の芽が育まれる年になるでしょう。そして、ちょっと沈滞気味だったベンチャー投資も再び活気を取り戻し、新たなバイオベンチャーの設立が活発化すると思います。何てったって戌年は、多産、安産の象徴ですから。もちろんだからといって、すぐに事業が立ち上がってくるとは思いませんが、将来のバイオ産業を牽引するような新しい技術や企業が誕生する、そんな一年になると期待します。