あけましておめでとうございます。
 大晦日の豪雪の中、ツルツル滑りつつ、命からがら太平洋岸のホテルにたどり着くという、スリリングな年の終わりを迎えました。
 豪雪でもがいた努力の甲斐があったのか、本日の日の出はここ10年最高のものとなりました。きっと明日は曇りだとまだ朝寝坊を決め込んだ読者に、この素晴らしい初日の出をお届けいたします。
 気温が低いため、海水から湯気が立ち上り、美しい日の出に興を添えています。これで富士山が見えればいうことがないのですが、山はうす曇で霊峰は姿を現しませんでした。
 さて、今年のバイオですが、どうやら1998年±2年に起こったバイオの第二の技術革新が商業化に向かう年となると考えます。読者の多くの方にとって、旧年以上に忙しくなる年であると思います。まさにバイオ産業の第二の離陸が始まろうとしているのです。
 昨年末に、米国Roche Molecular Systems社が米国食品医薬品局(FDA)からDNAチップの診断薬として販売許可を得ました。これにより、テイラーメイド医薬の実現がまた一歩進みました。FDAは遺伝学的データの任意提出のガイダンスの最終案を04年内に発表することに失敗しましたが、05年の早期に最終案とテイラーメイド医療実用化のための第二のガイダンス案を今年は発表する見込みです。わが国でも今年4月に施行される個人情報保護法に対応して、テイラーメイド医療を研究・実施する際の個人情報保護のガイドライン作成が進みました。研究に関する3省庁共同指針に加え、04年12月28日には厚生労働省が「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」・「医療機関等における個人情報の保護に係る当面の取組について」 を発表、いよいよテイラーメイド医療の基盤作成の歩みが始まりました。詳細は下記でアクセス下さい。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1224-11.html
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1227-6.html
 一方、米国Pfizer社とEytech Pharmaceuticals社が開発したアプタマー医薬が世界で始めて商業販売を認可されました。ぞくぞくと第二世代医薬誕生の足音が聞こえてきます。米国Introgen社はガン抑制遺伝子、p53の頭頸部がんに対して、FDAからファーストトラック審査の認定を受け、04年12月に許認可申請(Rolling BLA)を行いました。欧州医薬庁では、米国GTC Biotherapeutics社が分子農業(組換えヤギ)で製造したアンチトロンビンの商業化申請を行い、05年にも認可される見通しを発表しています。2002年に既に臨床開発の件数ではピークを迎え、2003年には米国での臨床試験の件数が減少した抗体医薬を継ぐ、第二世代バイオ新薬が続々と生まれているのです。2005年には画期的な新薬が上市されることは間違いないでしょう。
 最も大きな期待を集めたsiRNAの臨床開発も米国で昨年始まりました。05年には初期のフェーズ試験による安全性データが公表される見込みです。siRNAの最適設計原理も05年には公開される見込みで、10pM(これはホルモン並みの比活性です)のスーパーsiRNAを、創薬標的のバリデーションに活用したり、新薬そのものとして開発する競争が一斉に始まるはずです。今月にはsiRNAの基本特許を覆す発表もあります。わが国では、デザイン・ソフト開発、DDS、商業的なsiRNAの合成で世界をリードする企業が存在します。いよいよこれから本格化するsiRNA医薬開発が極めて楽しみな状況になってまいりました。わが国の製薬企業はまだ、siRNAに対して眉唾と保守的な態度を取っておりますが、皆さんのお宝の化合物で果たして10PMで作用するリードがどれだけあるのか?これ一つをとっても、早急にわが国のベンチャー群が育んでいる国産のsiRNA技術を国際的な価格で導入すべき根拠となるはずです。
 RNAiの最新動向をお伝えするため、1月15日から毎月、東大の多比良先生に取材してレポートするメール・ニュース「BTJ/RNAi/UPDATE」を創刊いたします。まだ、お申し込みをなすっていない方はどうぞ下記からお申し込み下さい。
http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/RNAi/index.html

 バイオ技術による低分子化合物選抜とデザインでは3つの技術が注目されてくると考えます。第一は構造生物学です。無細胞たんぱく質合成系とX線結晶解析やNMRの結合、それに結晶化のオートメ化によって、標的たんぱく質の立体構造の情報は飛躍的に増加しています。「グリベック」の後継物質の開発がこの研究の牽引車となっています。第二はヒトの多様性と薬効の分析です。昨年4月に発表された肺がん治療薬「イレッサ」の標的である上皮細胞成長因子(EGF)受容体の突然変異がわが国に多く存在し、それが「イレッサ」の薬効を決めているという論文は、薬物代謝酵素やトランポーターなど、薬物の血中濃度や標的臓器での濃度を決定するたんぱく質以外の、つまり、ずばり医薬品が直接作用する標的たんぱく質の遺伝的多型が薬効を変化させる実証データはこれが初めてです。アジアを除く全世界の臨床試験データで「イレッサ」の延命効果が証明できなかったことも加わり、改めてEGF受容体の多型が、この薬の生き残りそのものにも影響を与えることが再確認されました。SNPsと薬効や副作用の関係を解析する、日本での前向きの臨床試験も05年には4000人以上の登録が終了する見込みです。第三はケミカル・ジェノミックスです。04年には米国衛生研究所が、自動HTSロボットを活用して、片っ端から標的たんぱく質に作用するリード化合物をスクリーニングするケミカル・ジェノミックスの研究に着手しました。既に欧州、韓国、上海でケミカル・ジェノミックス・センターが稼動しており、ポスト・ゲノムの医薬品研究は、リード化合物の特許を巡る競争という最終段階を迎えつつあります。わが国でも05年2月に、お台場の産業技術総合研究所でケミカル・ジェノミックス・センター(名称は違いますが)が稼動します。こちらは、精密な疾患パスウェイ解析に基づき評価を受けた標的たんぱく質でスクリーニングする点で、他国を凌駕する可能性があります。
 このセンターの責任者である夏目さんが、最先端のプロテオーム・パスウェイ解析の現状を投稿なさるBTJ/Targeting Proteomics/Mail創刊を1月15日に創刊します。05年が、今までの研究とは次元が違う精密パスウェイ解析の正念場になると、私は確信しており、皆さんと情報を共有すべきだと判断しています。まだ、このメール受信登録なすっていない方は、どうぞ下記でご登録下さい。
http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/btjtpms/index.html

 わが国でも、12月末にTNF受容体製剤がわが国の厚生省の薬事・食品衛生審議会の調査委員会で承認され、05年にも発売されることが確実となりました。これはパスウェイ・ブロッカーによるリウマチ治療を狙った新薬であり、第二世代のバイオ新薬の代表ともいうべきものです。また、今年はJテックが申請中の培養皮膚も販売認可される見込みで、医薬品として厳密に審査されたわが国初の細胞医薬が誕生します。
 まずは新年のご挨拶と、今年のバイオ医薬品の展望をお届けいたします。アグリ、食品、化学品などは明日以降をお楽しみに。
 そろそろお節料理をいただきに参ります。
 今年も、旧年に比べ倍旧のご愛顧をBiotechnology Japanにお寄せいただきたくお願いいたします。

             Biotechnology Japan Webmaster 宮田 満