皆さん、おはようございます。San Franciscoは今日も快晴、ただし、気温はやや低めです。大阪商工会議所のミッションも午前中に到着、いよいよBIO2004が始まりました。「Where it all began」というのが今回のキーワードです。遺伝子組み換え技術を商業化した初のベンチャー企業、Genentech社を生み、無数のバイオ技術や製品を誕生させたバイオの都、San Francisocに、世界最大のバイオ会議・展示会「BIO2004」がやってきたのです。
 ただし、今ではGenentech社やCell Genesis社などは既に市外に本拠を移し、San Franciscoのバイオの空洞化が進んでしまったのです。 同市の命運をかけて進む、Mission Bayプロジェクトは、湾岸の工業地帯を再開発し、カリホルニア大学San Francisco校(UCSF)を招聘、それを中核に新たなバイオのクラスターを創造しようという試みです。 成長ホルモンの訴訟の和解金代わりに、UCSFにバイオの巨大の研究施設をGenentech社が寄付した、その建物がMission Bay地区にそびえたっています。
 7時半から始まった朝食セッションでは、Genentech社の創始者の一人であるベンチャーキャピタリスト、Thomas J. Perkins氏、Chiron社の創業者、William Rutter氏、Institute of System Biology創始者兼所長のLeroy Hood氏が勢ぞろいしました。Amgen社の創始者のGeorge Rathmann氏が欠席したのは残念ですが、80年代の綺羅星が並んだ格好になりました。  
 「米国のベンチャーキャピタルは1930年代にRockefeller家などの富豪が創設したのだが、現在のベンチャーキャピタルとはまったく内容が異なっていた。1972年にKleiner Perkins社を創設したのが、現在のベンチャーキャピタルの草分けだ。この時、世界最大の資金、800万ドルを集めて、投資を開始した」(Perkin氏)。800万ドルというところで爆笑が起こりました。現在では、1億ドル規模のベンチャーファンドは当たり前のことになっているためです。資金的にはバイオは30年前とは比べようもない規模に拡大しているのです。
 今回のBIO2004に参加して、23年という歳月の重みを感じています。日経バイオテクを創刊して、23年が経過、その間にバイオ産業は急速に成長、生命科学は創造以上の発展を遂げ、RNAiやES細胞など想像もしえなかった技術革新をもたらしました。「6週間前に、Microsoft社の創始者のBill Gates氏と話をした。その時の話題は免疫反応をいかにデジタル化し、シミュレーションして患者の免疫反応を予測するか、だった。相当話が盛り上がった」と指摘したのはLeroy Hood氏でした。司会者のこれからもバイオは有望なのか?という質問に全ての創始者達が声を揃えて「今が最高に面白い」と指摘したのが印象的でした。
 「これからは大量に生まれる生命科学の知識をどうやって一般市民に伝えるか?コミュニケーションが重要になる。しかし、米国の大学ではコミュニケーションを生命科学の学生に教える機会はほとんどない」とRutter氏が問題を提起すると。
 「結局はMicrosoft社と同じ問題をバイオが抱えている。膨れ上がる生命科学の情報をどうやって処理して、伝え、共有するか?私はバイオの分野でMicrosoft2社が誕生すると思う。但し、Microsoft社からのスピンアウトではないだろう」とHood氏が締めくくった。
 誕生から30年、バイオ産業は知識産業としての性格をどんどん強めています。「20年前は、バイオの知識だけを持つベンチャー企業が、製薬企業と50:50で権利を分け合うことも可能だったが、今では製造や食品医薬品局の規制をクリアする知識が重みを増している」とRutter氏。将来のバイオ産業は、幅広い分野の知識を融合させ、それを活用するインフォメーション・マネージメントに成長を依存することを展望しました。
 バイオ産業はいよいよ揺籃期を脱し、バイオテクノロジー以外の技術、法律、規制、倫理、知的財産権、ファイナンス、労務など幅広い知識や人材を必要とする当たり前の産業になりつつあると実感しました。多くの才能を動員しなくてはわが国のバイオ産業は成長しないという訳です。今や生命科学者はあまり気味で、むしろ、生命科学を熟知(これは高望みなので、生命科学を恐れない)する多分野の技術者や科学者、そしてマネージャーが、わが国のバイオ産業の律速になりつつある、この皮肉な現状をなんとかしなくてはなりません。
 それではお元気で。現地速報はこれからも続けますので、ご期待下さい。(宮田 満@San Francisco)


BIO2004特集はここをクリック


+++++