バイオ農産物の研究開発の焦点は、米国の国民病(30%以上)である肥満に当たっている。これは6月6日、San FranciscoのMoscone Centerで始まったBIO2004のMedia Brunchで強調されたもの。米国Monsanto社と米国Daw AgroScience社は既に製品化に着手している。除草剤耐性など農業生産者に価値を提供した組換え農産物から、消費者に価値を提供する第二世代の組換え農産物開発の息吹がここにある。
 こうした動きを加速するのが、米国食品医薬品局(FDA)食事ガイドラインだ。2003年7月には、HDLコレステロールを低下させ、循環器疾患のリスクを上げる、トランス脂肪酸量を食品のラベルに表示すべきだという見解を発表、2006年1月から表示が義務付けられる。
 「消費者の関心は総脂肪量から、良い脂肪と悪い脂肪への峻別に移るだろう。FDAの食事ガイドラインもこうした動きに対応するはずだ」(米国Dow AgroScinece社Global Business Leaders for Oils and OilseedsのDavid Dzisiak氏)。米国National Academy of SciencesのInstitute of Medicineは2002年9月に「トランス脂肪酸、コレステロール、飽和脂肪酸の消費量は少なければ少ないほど良い」と勧告した。一方、良い脂肪の代表であるω3脂肪酸は3-4gを毎日摂取すると心臓発作の危険性を50%以上削減できるといわれている。
 米国Monsanto社は通常の交配育種(ただし、バイオマーカー育種)で、多価不飽和脂肪酸の含有量を低下させ、安定化するため水素添加したダイズ油に発生するトランス脂肪酸量を減少したダイズを2006年に商業化する見込み。「今後、10年以内には飽和脂肪酸と水素添加して生ずるトランス脂肪酸を劇的に減少させたダイズを商業化できる。また、遺伝子操作で、海藻由来の遺伝子をダイズに導入、全脂肪酸の30%をω3脂肪酸に改変したダイズの商業化も近い」と、米国Monsato社副社長Robert Fraley氏(写真、両側は農業雑誌の記者、いずれも肥満している)。
 日本では水素添加したダイズ油の摂取は少なく、またリノール酸などの不飽和脂肪酸の摂取が多いので、現状ではトランス脂肪酸の問題はあまり注目されていない。米国Dupont社は飽和脂肪酸の含量を低め、オレイン酸含量を高めたダイズを既に商品化している。
 Dow AgroChemical社は、脂肪酸不飽和酵素の遺伝マーカーを利用して、交配育種したカノーラ「Natreon」を1996年から商品化している。7%しか飽和脂肪酸を含まず、70%以上がモノ不飽和脂肪酸で、ω3脂肪酸含量も増大させています。搾油した最終製品にはトランス脂肪酸がほとんど含まれていない。「1996年から栽培を開始した。日本に輸出されているカノーラオイルの7%が既に『Natreon』だ」とDzisiak氏。同社は遺伝子操作により不飽和酵素を強化した第二世代の「Natreon」も開発中だ。
 組換え小麦では、市場の縮小と消費者の声に負けた組換え農作物が、肥満解決で消費者に受け入れられるか、これからが正念場だ。米国で成功したら、膨大なダイエット市場を持つ、わが国に波及しない訳がない。「肥満よりGMO」である。(宮田 満@San Francisco)


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