先日開催された「バイオテクノロジービジネス最前線セミナー」。Biotechnology Japanの読者180人以上が押しかけ、会場は満員盛況となった。当日は基調講演として、九州大学大学院農学研究院の久原哲氏により、「DNAチップの最前線」と題し、講演が行われた。酵母を用いて、トランスクリプトームの研究を進める久原氏だが、その中心的な役割を担っているのがDNAチップだ。
 「ヒトゲノム配列解読終了の結果から、新薬の標的となる遺伝子を見つけ、創薬へと結びつけることが重要です。そのアプローチのひとつが、遺伝子発現プロファイリングや遺伝子ネットワークの解明だと考えています」。
 同氏の戦略は、酵母で基本的なパターンを見出し、それを、ヒトを含めた高等生物へと応用していくことで、創薬に発展させるというものだ。6000個以上の酵母の全遺伝子をチップ上に乗せ、様々な条件下で実験を進めている。何通りもの実験を繰り返し、データを解析、遺伝子ネットワークを構築することで、目的の疾患に関連する遺伝子群を解明するのである。とは言え、DNAマイクロアレイは再現性や誤差の問題に、多くの研究者が頭を悩ましているのも事実である。しかし、久原氏は次のように指摘する。
「DNAマイクロアレイを成功させる上で重要な要因は、totalRNAおよびmRNAの抽出の段階です。この過程を正確・確実に行い、高品質なRNAで実験を進めれば、必ず有用なシグナルを得ることができます。またDNAマイクロアレイは、従来の生物学実験と違い、実験終了と共に新たな知見が得られるわけではありません。チップから得られた結果を、しっかりと解析することも重要なのです」。
現在、創薬を中心としたバイオ研究は、ゲノムからトランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームへと進んでいる。しかしながら、研究開発投資が増大するだけで、一向に結果へと結びついていないのが現状である。
「DNAチップを含め、バイオ研究における情報量は非常に膨大です。それらを効果的に利用し、創薬に結びつけるには、それぞれの研究を横に広げるだけでなく、縦にも攻めていく必要があると思います」。
久原氏が言う縦のラインとは、実験から得られたデータからシミュレーションモデルを作製し、各研究分野の効率化を促進することである。情報量が増加の一途をたどるバイオ研究において、縦のラインの強化は賢い戦略であり、その時、威力を発揮するのがバイオインフォマティクスであることは言うまでもない。
このように、創薬・バイオ研究におけるDNAチップの重要性は、以前にも増して高まってきている。価格面の問題などクリアしなければならない課題も多いが、再現性という点で苦労することは、遠い昔の出来事になりつつある。

講演の後、日経BP社宮田満氏との討論が行われ、久原氏のDNAチップへの考えが、より詳細に明らかにされた。この続きは日経バイオビジネス8月号にて。また、このサイトでも後日詳細レポートを専門情報サイト「DNAチップ」で掲載予定です。ご期待ください。(宮田 満)


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