カナダTorontoで開催された世界最大のバイオ会議、BIO2002は、世界52カ国から1万5000人の参加者を集め、盛況のうちに閉幕を迎えた。主催者の米国バイオインダストリー協会(Biotechnology Industry Organization、BIO)は、次回のBIO2003を2003年6月22から25日、米国のバイオキャピタル、Washington DCで開催することを決定した。
 今回のBIO2002では、医薬、農業で産業化が加速していることが発表され、参加者はバイオ産業の成長に信頼を深めた。米国の穀物コングロマリット」Cargill社がウシSNPsを活用して、良肉質ウシの鑑別とブランド化に乗り出したことを会場で発表、組換え作物以外にゲノム研究が農業市場で大きなビジネス・チャンスを掴んだことを印象付けた。
 また生分解性プラスチックの市場の離陸が始った結果、環境分野でもバイオ産業が成立し得る確信を得た。「この日が来るのを待っていた」と強調するバイオベンチャー企業も多く、今後、バイオマス関連市場の産業化が一段と拡大する胎動を感じた。
 更に、抗体医薬などを植物や動物などで生産する分子農業も臨床試験段階に到達した。前回のBIO2001ではITとバイオの融合が大きな話題を呼んだが、BIO2002は北米の穀倉地帯の中心で開催されたことも加わり農工の融合という新しいテーマを浮き彫りにした。
 ES細胞や成人幹細胞による再生医療の技術開発と産業化は、今回の最も熱いトピックだった。カナダ、オーストラリア、シンガポールなど、政府が再生医療研究センターを創設、この分野に人材と資金を投入している。英国も治療目的の体細胞クローニングを唯一認めた国として、再生医療の研究と商業化でイニシアチブを握ろうと科学担当大臣まで会場に派遣、強力な働きかけを行った。
 昨年9月11日の同時多発テロも今回の会議に影を投げかけた。しかし、逞しいバイオ・ベンチャー企業は、米国政府が10億ドルもバイオ・テロ対策に投資することを受け、ビジネスチャンスに変えていた。株式市場が低迷し、資金獲得に汲々としているバイオベンチャー企業は新たな資金源を発見したようだ。
 さて、BIO2002におけるわが国はどうだったか?
 結論は単純だ。まったくゼロである。BIOの関係者が「我々は日本に何か不当な扱いをしたか?ビジネスセッションにも展示会にもほとんど日本の企業の姿がない」と真顔で心配するほどだった。
 前回も存在感は薄かったか、今回は完全に何もなくなった。会議での発表者は日本のバイオインダストリー協会からただ1名、展示会でブースを開いていたのは旭硝子だけ(シンガポールのブースで三井物産が出資したKooprime社が出展していたが)。アジアのバイオあの中心はシンガポールに完全に移動したかのようだった。
 今回、動向したBiotechnology Japanの読者の中には具体的に技術導入や投資のきっかけを得た人もいた。知識資本主義では国内市場など存在しない。従業員3人のベンチャー企業も彼らの知的財産を堂々と、BIO2002で世界市場に売り込み、世界から商業化に必要な技術を導入して、急成長している。
 このままでは日本のバイオは「井戸の中の蛙」に終わり、政府のバイオ振興策が先細りになったら、国際的に競争できない”ベンチャー企業”や大企業のバイオ事業の屍が累々と横たわる可能性も出てきた。わが国のバイオはもう一度、「開国」する必要があると痛感した。(宮田 満@Toronto)