皆さん、おはようございます。昨日はスイス連邦工科大学の技術移転部門のお世話で、同大学とZurich周辺のバイオ・クラスターを訪問しました。いい加減なものですが、「最も注目されるベンチャーを取材したい」と相手任せにしており、車が狂牛病の検査で世界市場の80%を握るPrionics社に横付けされた時、思わず「やったー」と叫んでしまった私は記者として失格かもしれません。同社がZurichにあることすら忘れていました。
 しかし、私の取材生活を省みるとかずかずのスクープをものにしてきましたが、その背景には偶然の助けが少なからずありました。そこで今回もその偶然に悪乗りして、かなり充実した取材をすることができました。1時間でプリオンを検出する簡単検査の開発や、新型クロイツフェルト病の治療薬開発に関しては、後ほど報告させていただきます。何しろ、時間がなく、昨日お約束した英国の記事も積み残しです。申し訳ありません。
 上記の写真は、今年1月にスイスZurich大学から移転したばかりのPrionics社の受託検査ラボです。ここで狂牛病の検査が行われています。同社CEOのMarcus Moser氏によれば、今まで大学に間借りしていたせいで、検査室とオフィスのスペースは現在の10分の1しかなく、超過密状態だったらしい。狂牛病パニックがEU全体とわが国などに飛び火したため、2001年には同社の売上はなんと前年の100倍に増加したのですから、やむえない事態でした。

 同氏いわく「スイス人は過密な条件で働くことを嫌う、だから前のラボはそれでもここに勤めたいというベンチャー精神を確かめるには最適だった」。本当でしょうか?冗談としてはよいできです。
 線路脇の薄汚い工業地帯に同社が入っているビルがあります。元鉄道車両の工場の跡地を再開発して作ったサイエンス・パークです。田園とハイテクが融合している英国Cambrideとは雲泥の差ですが、同社の隣に入居しているCytos社も若く、元気で、しかも先端の科学を追及していました。2003年にはベンチャー企業のインキュベータも近くに開設されます。いよいよZurichのバイオ・クラスターも飛躍の時期を迎えようとしています。
 昨日一番面白かったのは、「スイス連邦工科大学とZurich大学の違いは?」という質問に対して「東大と東京工業大学と考えて欲しい、そして我々の方がZurich大学よりも質が高い」と工科大学の教授が真顔で返答したことでした。おまけに、工科大学の屋上から南の方向、つまりアルプスが本来ある方向(昨日は雨でした)に、工科大学本部より高いビルがあり、あのビルはと尋ねたら、「Zurich大学だ。確かに向こうの方が高いけど、こっちの方が有名だ」と付け加えました。
 世界最高レベルの研究機関が競争して存在、そして今は競ってベンチャー企業を創設しようとしています。やはり競争無きところには停滞しかありません。東工大もすずかけ台から早くバイオ関連学部を本郷か、柏に移す必要があるのではないでしょうか?
 本日は午前8時から、いよいよBioSquare2002が始ります。日本のベンチャー、バイオ侍達の活躍を楽しみにしております。詳細は追って報告いたします。では、皆さん、お元気で。(宮田 満@Zurich)