国立循環器病センター研究所生化学部部長の寒川賢治氏らのグループは、生理活性ペプチドであるグレリンを利用して、循環器病以外の疾患を対象にした臨床研究に今夏から取り組む計画だ。臨床研究は、京都大学医学部付属病院探索医療センターで行う予定で、探索医療センターで行う最初の臨床研究となる。

 グレリンは、成長ホルモンの分泌促進や心機能の改善などの作用を持つペプチド(囲み参照)。寒川氏らは、2000年夏より循環器病センターで重症心不全などを対象にした臨床研究に取り組んでいるが(日経バイオテク誌2001年5月21日号22頁参照)、循環器病以外の疾患を対象にグレリンの臨床研究を実施するのは今回が初めてとなる。将来的に医薬品として実用化する場合には、サントリーが協力する計画だ。

 臨床研究では、まずは健常人にグレリンを単回投与して安全性を確認したあと、各患者に投与する。対象となる疾患は今後決まるが、拒食症や成長ホルモンの分泌不全、さらに悪液質(カヘキシー)などの疾患が候補に上がっている。グレリンは、静脈注射で投与する。

 京大の探索医療センターは、基礎医学研究の成果を臨床応用まで一貫して行うトランスレーショナル・リサーチを実行するための拠点として、2001年度に設置された。同センターには、臨床研究の計画を領域を限定せずに全国から募集する流動プロジェクトがあり、寒川氏らの臨床研究は、50近い応募の中から2つ選ばれた2001年度の流動プロジェクトのうちの1つだ。

 探索医療センターの最大の特徴は、新規薬剤をヒトに投与する臨床研究を効率的に進めるために、組織だった体制が整備されていることだ。同センターには、基礎研究の成果を臨床研究に結び付けるための研究を担う探索医療開発部、客観的な視点から臨床研究の計画立案と結果の評価を行う探索医療検証部があり、さらに2002年度からは臨床研究を実際に行う探索医療臨床部が設置されることが決まっている。探索医療臨床部には、今夏までに専用のベッドや医療設備が設置される計画で、グレリンは最初の臨床研究として取り組まれる予定だ。(坂田亮太郎)



※※グレリン
 成長ホルモン放出促進因子受容体(GHS-R)の内因性のリガンドとして、寒川氏らの研究グループが胃で多く産生しているグレリンを99年に発見した。アミノ酸が28個連なるペプチドで、活性化には3番目のセリン残基が脂肪酸n-オクタン酸でアシル化されることが必要だ。下垂体からの成長ホルモン放出を刺激するほか、中枢で食欲を調節したり、虚血性心疾患などで傷ついた心筋を回復させる働きがあることを寒川氏らは確認している。