名古屋大学大学院教授野依良治氏のノーベル化学賞受賞に関して、ノーベル医学生理学賞の受賞者でもある米国Massachusetts Institute of Technology教授の利根川進氏は「誠に慶賀すべきことだ。しかし、昨年と今年のノーベル化学賞の連続受賞が、日本に創造的な科学研究の環境が整ったことを必ずしも意味していない」と指摘した。
 わが国の政府の一部には、今回の受賞が2000年より始めた「ミレニアム計画」の成果の如く、宣伝する向きもあるが、野依氏や白川氏のノーベル賞受賞の根拠となった研究は、ミレニアム計画よりもはるか以前の業績が対象だ。「日本には才能があるのだから、科学研究の環境を改善すれば、もっと世界に貢献できる研究が可能になるという潜在力が示されたと解釈すべきだ」(利根川氏)。
 同氏は「ここ10年以上、日本の科学研究の環境はまったく変化していない。とにかく、大学を改革しなければ、創造的な研究は期待できない。独立行政法人化が、大学教官に国家公務員に準じた待遇を与えるとしたならば中途半端だ。創造的な研究のためには、米国の先端的な大学のように、民営化し、リスクを研究者が取る体制を整備すべきだろう」と付け加えた。
 今回の受賞は個人の創造を絶する努力によるところが大きい。決して、わが国の科学研究システムが世界に卓越していることを示している訳ではない。
 ノーベル化学賞の連続受賞に浮かれたり、幻想を抱いて、わが国の科学研究の構造改革を怠ることは、100年の過ちを犯すことになるだろう。(宮田 満)

+オピニオン+