土曜の夜のProteome Systems社(PSL社)の社長とCSOとの取材をもって、今回の海外取材を完了。7日、夜に成田に帰着しました。
 最後の取材でもスクープを確保、11月2日に発表できるはずです。この取材前までは、プロテオームを疑問視しておりましたが、この考えは180度変わりました。遺伝子機能解析にプロテオームは不可欠です。しかも、日本の都立大の磯部氏のグループは米国Cerela社をはるかに凌駕するプロテオーム解析技術を完成していました。ひょっとしたら、ゲノム解読で遅れをとり、構造ゲノムでも米国の物量戦術に負けそうな、わが国にとって、米国が出遅れたプロテオームはチャンスかも知れません。
 豪州はのんびりしたところですが、プロテオームは世界の最先端を行っています。よくよく考えるとその原因はマイペースにありました。プロテオームという概念自体を考え、それを可能にするために15年も営々と基礎研究を進めてきたPSI社社長のKeithと話していると、米国のブームに動かされず、ゲノム解析の次を見据えて堂々と研究してきた姿勢に感動します。そして豪州政府もゲノムではなく、プロテオームに集中投資を始めました。同国の割り切りは見事で、ヒト・ゲノムのデータベースをCerela社から購入し、大学や政府の研究機関で閲覧可能にしました。
 彼らはバイオ研究の本道を、ゆっくり急いでいたのですね。最終的には陽が当たらないかも知れませんが、きっと豪州にはこうして科学を進めている研究者がきっと大勢いるに違いません。
 翻ってわが国はどうか?どうもわが国の科学はスケールが小さくなったとしか思えません。政府も米国の後追いを提案する科学者の提案を安易に取り上げたり、実際には先端的なアイデアでも、国の予算を執行するために2年以上かかり陳腐化させたり、全部矮小化の方向に向かっています。
 国立研究機関や大学の独立行政法人化の動きは、完全民営化を前提に賛成しておりますが、私達が独創こそ科学研究の命であるという認識を欠くと、豪州がプロテオームで成功しつつあるような、次のバイオの種子をはらむべき、ゆっくり急ぐ環境が失われることを懸念します。国際競争力を決めるのは、経費の削減や目前の利益捻出ではありません。
 実際、この豪州の小さなプロテオームの企業、PSL社に、11月2日、米国が頭を垂れます。この事実から、私達が得る教訓はとてつもなく重いものです。
 帰国は英米のアフガン爆撃直前でしたが、何の混乱もなく、取材は運にも恵まれました。21世紀型戦争?は勝者も、敗者もなく、ただ世界の混乱と経済の低迷が招かれる懸念があります。こうした暗闇の中で、一縷の光明は、生命の大切さを解明、人間性に基づく新産業を人類にもたらすバイオテクノロジーであることはいうまでもないでしょう。
 米国フロリダ州で、2人目の炭疽病患者が発生、米国政府は生物兵器によるテロである可能性を暗示しています。技術は両刃の刃です。皆さんの研究が悪用されぬよう、実験の管理に心するのはバイオ関係者の義務であることをお忘れなく。
 では、皆さんお元気で。(宮田 満@Tokyo)


ComBio2001特集「プロテオームはバイオを救うか」
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