23日午後6時半からSan Diego動物園で、マスコミ関係者のレセプション「Natural Diversity」が開催されました。規模も大きく、パンダも居るこの動物園はSan Diegoの誇りで、個人的には今回の取材でもっとも期待していたものでした。
フクロウ、アグウチ、ハリネズミそしてミルクスネーク
 収穫は期待以上でした。カクテルの間、動物園の関係者が珍獣を連れてきて、実際に触らせながら解説をしてくれるという機会に恵まれました。世界中から集結したバイオ記者一同、大興奮の一夜となりました。
 まずはSan Giego周辺にいるフクロウが登場、15m離れて新聞が読める目の良さに反して、嗅覚を欠いており、「だからスカンクの子供を襲うことができる」という飼育係の話に一同妙になっとくしました。 フクロウの耳は、見かけの耳で、本当の耳は大きく見開いた目の外側に、しかも左耳は上方に、右耳は下方に付いていて、これによって立体的に音声の方向をつかむことができるらしい。
  次の登場したのがアグウチという大きなネズミで、アフリカに住む動物です。柄の割にはおとなしく、なんと好物がイチゴでした。黙々と食べる姿はなんとなく、ねずみというよりも、ウサギに近いかわいらしさです。バイオの関係でいえば、肥満関連遺伝子にアグウチという名前の遺伝子があり、きっとこの動物から取った名前だと直感したところです。
  三番バッターはハリネズミです。私も初めて触りましたが、思ったより痛くはありません。プラスチックの針のような感触でした。ひょっとしたら彼が53歳という高齢であるかもしれません。現在のところ「ハリネズミがどの位長命かはわかっていない」(飼育係)という不思議な動物です。細長い口からミミズのような舌を出し、蟻を食べています。ほっとかれるとヨチヨチとテーブルの下を動き回っておりました。ちょっと臭いのが玉に瑕でした。
 そういえば、形態形成を支配する遺伝子にヘッジホッグという名前の遺伝子がありました。ハリネズミに由来する名前なんでしょうか?
 最後は、ミルクスネークというベジタリアンの蛇で、見かけのピンクの派手さとは対照的におとなしく、触ると通常の蛇とは異なり、鱗がソフトでした。私としてはかなり勇気を奮って触ったつもりでしたが、女性の記者達がキャアキャアいいながら、いつまでも蛇を放さないのが印象的でした。聖書にイブをそそのかしてリンゴを食べさせ、アダムを巻き添えにして2人が楽園から追放された原因を作ったのが、蛇であったのが妙に納得できた晩でした。
コモドトカゲを抱きながら講義が始まる
  プレスセッションのメインイベントは夕食を食べながらの「生命の多様性」と題した講義です。
 大きなペットケースからイグアナを取り出した動物園の研究者は、おもむろに「触るとサルモネラ菌に感染するから気をつけて」と注意しながら、イグアナを身体に巻きつけたまま会場を歩き回ります。
 同氏によれば、San Diego動物園の研究チームは、イグアナに発信器を取り付け、長期間観測し、このトカゲは1日に5マイルも移動すること、また5マイルも離れたメスの存在をオスは嗅覚で感じ取り、その方向に身を向けて一目散に歩いていく修整があるとのことでした。
 妊娠可能なイグアナの出すフェロモンに導かれるまま、何匹もの雄が一番乗りを目指して汗を欠く姿を創造するとあまりに哀れで共感を呼びました。
 この他、ライオンとチータの個体数に逆相関があることから、ライオンが天敵であることをチータの親が教えられるかどうかがチータの繁栄を決めていると指摘、生物の多様性が単純な遺伝子の多様性に基づくだけでなく、背景には遺伝子があるとはいえ、両親の子供への教育という獲得形質的な行為が重要であると、写真の研究者は主張しました。「チータは本能で動物を襲うことは教える必要がないが、ライオンを見たら逃げろということは本能では関知できない」という訳ですね。
 環境に対する関心の深まりが、生物多様性の保全に大きな世論の流れを作り出しています。また、今後、グリーン・バイオなど環境と共存可能な工業プロセスの開発のためには、微生物から動植物までこの地球の存在する生物の遺伝的多様性を活用することが不可欠だ。BIO2001でもこの問題は大きなテーマとして取り上げられます。この晩のセッションは、バイオ記者達に深い印象をつけることに成功したといえるでしょう。
 最先端のバイオには深い基礎研究が必要です。San Diego動物園やScrips海洋研究所が存在するSan Diegoでは、220社以上のバイオ企業以外にこうした科学の深みも存在することを認識させられました。
バイオ界の珍獣?、Simon Best氏と邂逅
生物学的な多様性はバイオ産業にも存在します。その中の珍獣と呼べるのがSimon Best氏です。3年前、英国Zeneca社がオランダのバイオ・ベンチャー企業
Mogen社を買収、いよいよ農業バイオに出ることを決定し、その事業部門長に就任したのがSimon Best氏でした。同氏はその直後に来日し、多くの日本の企業にお披露目をし、そして私のインタビューを受けていてだいたた。問題はそれからです。いざ掲載の段となり、細かい事実関係をメールで確認しようとしたところ「Simonは会社を離れた」という返事が届き、記事が没になるという痛い経験をしていました。いくら探しても行方不明だったことを覚えています。
 たまたまその年の末に、Simon氏が英国Roslin Bio-Med社の社長になったことを聞きましたが、99年5月に同社を米国Geron社に売却、その後、消息がまた消えてしまいました。まるで密林から時々バイオという草原に顔を出す珍獣です。
 その彼がなんと私が座ったテーブルの目の前の席に座ったのです。まさに珍獣と邂逅。「君のことは覚えているぞ」(Simon氏)。少しの反省も見せず、からっとした挨拶です。現在同氏は、スコットランドのEdingbrouhの英国Medical Research Coucilから技術と資本を獲得、生殖生理に基づいた新しい医薬品や避妊薬を開発する英国Ardana Bioscience社を創業、また社長に収まっておりました。変な名前だといったら、「インドのヒンズー経の両性具有の神様の名前だ」という。同氏のインド人の妻がつけたらしい。この珍獣にも案外可愛らしいところがありました。
 しかし、バイオの世界は狭い、そして海外取材などを通じて、どんどんこうした人の和が広がってBiotechnology Japanの情報網が拡大しつつあることを実感した晩でもありました。
 Simon saids「Geron社がRoslin Bio-Med社を買収したのは、他人のES細胞は移植した時に拒絶反応が出る、そこで患者の細胞をRoslin社の体細胞クローン化技術の中のリセット技術でES細胞化して、自家ES細胞移植を狙った」とのこと。これは皆さんだけの極秘情報です。
 それでは皆さん、お元気で。(宮田 満@San Diego)


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