現在、米国で第四回米国遺伝子治療学会の参加中の琉球大学医学部解剖学第2講座の石田昭彦氏が、現地からBTJの読者に本日から報告する。同氏自身、遺伝子治療の研究を手がけており、専門家から見た、遺伝子治療の最前線をお届けする。


(第一報)
 マリナーズでのイチローと大魔人の活躍に湧くシアトルで、5/30から第4回米国遺伝子治療学会が開催されている。いつもながら日本人研究者の姿が目立った。
 日本の遺伝子治療ベンチャーの草分けであるディナベック研究所、大阪大学の閉塞性動脈硬化症の遺伝子治療をサポートするメドジーンバイオサイエンス、ベクター生産と供給を目指すアンビス(先端医学生物化学研究所)の面々やゲノム解析で活躍されている慶應大学の清水信義先生の顔もみられた。その他中国、イギリスなどアジア、ヨーロッパからの参加者もかなり多い。
 初日は午後7時から10時15分までEducation Programが開催された。これから遺伝子治療の中心となっていくであろう血液幹細胞、中枢神経、血管新生等につい講演が行われた。正直言ってブレイクスルーになるとかエキサイトして眠れなくなるような話題はなかった。臨床での治験における報告も劇的な効果はまだ見られていないようである。これからの遺伝子治療に少し不安を覚えながらも、長旅の疲れでぐっすり眠り込んでしまった。
 2日目は午前8時半から講演、シンポジウム、数々のセミナーが開催された。午後は一般講演、夕方からポスター発表が行われた。ここである日本人のポスターの前が人だかりになり、2時間半のディスカッションの間、質問が絶えなかった演題があったので紹介する。大阪大学医学部遺伝子治療学講座の小池弘美先生、森下竜一先生からの演題である。
 大阪大学では既に核酸医薬であるE2Fデコイを用いた血管拡張術後の再狭窄予防治療を行っており、近々にHGF(肝細胞増殖因子)を用いて閉塞性動脈硬化症に対する遺伝子治療も行う予定である。今回の演題は “Local Gene Transfer into Rat Kidney Using Low Voltage Ultrasound with Contrast Microbubbles ;Development of Novel Non-Viral Gene Transfer”。カテーテルを用いて腎臓にマイ
クロバブル系造影剤とプラスミドを注入、その後腎臓に超音波を照射することにより、マイクロバブルが弾ける力を利用して腎糸球体および間質に遺伝子導入をおこな
うものである。
 これは共同演者の福岡大学医学部第一解剖学の実験を元に行われている。慢性腎炎など腎疾患への応用を考えているとのことだが、肝臓、筋肉、脳などこの導入法によるターゲットは幅広い。用いているマイクロバブル系造影剤はオプチゾンと呼ばれているもので、他のマイクロバブル系造影剤と比較して、バブルが弾けにくい。よって超音波照射により弾けたときのエネルギーは大きく、細胞に2-3マイクロくらいの穴があく。オプチゾンは日本ではまだ認可されてはいないが、既に米国では臨床的に用いられている。また超音波装置は現在,関節痛などの温熱療法に用いているものを使用しているが、米国では遺伝子治療専用の超音波装置が開発、販売されている(RICHMAR社)。
 午後7時からはCell Genesys &s_comma;Valentisによるシンポジウムが10時まで続いた。(石田昭彦@Seattle)


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