米国Incara Pharmaceuticals社は、11月16日、肝臓内で肝細胞に再分化できる肝細胞前駆細胞の単離技術に関する特許を、米国特許商標庁(PTO)から取得したと発表した。

 肝幹細胞を含む肝細胞前駆細胞は、肝臓の組織中で、成熟して肝細胞に分化する。今回、Incara 社が取得した特許に関する技術は、米国North Carolona大学のLola M. Reid氏の研究成果だ。Incara 社は、同技術のライセンス権を獲得している。

 Incara 社は、丸ごとの移植に適さない肝臓から肝細胞前駆細胞を単離し、同前駆細胞を用いた肝臓疾患や遺伝的な肝臓疾患の治療を検討している。同社は、肝細胞前駆細胞を静脈注入によって移植する臨床試験を、2001年にも開始する計画だ。肝細胞前駆細胞の注入により、移植用の肝臓の慢性的な供給不足を解消したいと考えている。

 米国では、年間推定30万人の慢性肝臓疾患による入院患者がおり、年間約3万人が肝臓の疾患により死亡している。重度の肝硬変などにより肝臓の移植を必要とする慢性的な肝臓疾患の患者は10万人以上にのぼる。現在、肝臓移植は、これらの多くの肝臓疾患に対する唯一の治療法だ。しかし、移植に適する肝臓は年間約4800個しか存在しない。さらに、肝臓の移植手術や術後1年間のケアに必要な経費は、1人あたり30万ドルを超えると推定されている。

 疾患肝臓内で、分化、再生し、機能する細胞を移植することができれば、臓器移植の必要性が減り、多くの患者を治療することが可能になる。肝細胞前駆細胞の成長能力は、疾患で損傷を受けた肝臓組織を再生するのに十分だと考えられている。簡単な外科的手法で、肝細胞前駆細胞を患者の肝臓内、もしくは肝臓付近に注入することもできる。同手法は、より安全で、利用しやすい手法であり、肝臓疾患患者の治療コストも削減できると期待される。(フリーライター・鈴木志野)


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