新年あけましておめでとうございます。私のミスで、私だけご挨拶が遅れたことを深くお詫び申し上げます。

 2000年は、国内外ともに農業分野でのバイオには試練が続きそうです。それは、2つの理由からです。遺伝子組換え農産物・食品への規制強化と、世界規模で進む農業バイオの戦略修正です。99年後半から顕著になってきたこの2つの潮流は、2000年になっても決して緩まることはないでしょう。

 既にお気づきのこととは思いますが、納豆では、小売店の店頭の半分以上の商品が「組換え不使用」を表示しています。食品からの組換え体排除競争は、とどまることを知らない状況です。さらに、厚生省が計画中の組換え食品の表示義務制度の中身次第では、農水省の表示制度を上回る徹底した市場からの組換え体排除を助長する可能性も否定できません。

 数少ない望みが、サントリーの組換えカーネーションです。99年から日本国内で色変わりカーネーション「ムーンダスト」の商業栽培が始まったほか、2001年春を目標に、赤、ピンク、黄色などの各種の花色を持つ、日持ちの良い組換えカーネーションも商業化する意向です。外国の企業や農家でなく、日本の消費者や農家も、バイオによってメリットを享受できることをもっと知ってもらう絶好の機会としなくてはなりません。

 一方、農業バイオをめぐる事業環境は、厳しさを増す一方です。ドイツHoechst社とフランスRhone-Poulenc社との合併で誕生したフランスAventis社だけでなく、米国Monsanto社と米国Pharmacia & Upjohn社の合併、スイスNovartis社と英国AstraZeneca社が農業部門を統合した後に切り離して誕生するSyngenta社など、各社とも生き残りをかけた合従連衡に躍起です。日本でも、唯一世界に対抗できるだけの農薬事業を営む住友化学工業が、米国Abbott社の生物農薬部門を買収するほか、日本たばこ産業(JT)とAstraZeneca社のイネ合弁企業設立など、農業バイオの事業強化へ向けた動きは始まっています。医薬子会社の売却を決めた三井化学も農業バイオ事業の戦略再構築を急いでいます。世界だけでなく国内でも生き残りをかけた事業再編は今後も確実に進みます。その先に、各社がどのような未来図を描くのかに注目しなければなりません。

 最後にもう1つ。これまで以上に加速しそうなのが、バイオと情報処理技術(IT)の融合です。

 実は、99年11月からこの年初までのわずか2カ月間に、米国で驚くべき動きがありました。IT技術を持つバイオ企業の株価が急騰したのです。米国Incyte Pharmaceuticals社が3倍、Celera社をグループに持つPE社が4.5倍、Millennium社が1.6倍といった具合です。Incyte社、Millennium社、PE社の3社の株式時価合計額は100億ドルを越え、三共の時価総額に匹敵します。3社とも、医薬品は1つも販売していません。

 年明けの1月5日に米国では株式市場が全面安となったため、これらバイオ企業にも若干の調整の動きはありました。しかし、従来のバイオ研究にとどまらない、コンピュータやネットワークを絡めたバイオインフォマティクス技術を併せ持つIT型バイオ企業に高い期待が寄せられているのは間違いのない事実です。

 日本でも、日立グループや島津製作所など、機器や情報処理に強い会社がライフサイエンス強化の意向を明らかにしています。DNAチップやインフォマティクスを標榜したバイオベンチャーも徐々に誕生し始めています。どの企業も、まだ米国企業と対抗できるほどの力は持ち合わせていませんが、バイオとITの融合は、まだ始まったばかり。これからの技術発展をうまく事業戦略に組み込めれば、日本企業が躍進できるチャンスは決して少なくないと期待しています。(村岡真一郎)


+2000年新春+