新年明けましておめでとうございます。いよいよ2000年の幕が上がりました。

 皆様におかれましては、コンピューターの誤作動による2000年問題はございませんでしたでしょうか。旧年、2000年問題について対応を追われるニュースを聞くたびに、コンピューターに依存している社会であることを実感しました。コンピューターを開発した人々が、コンピューターが社会の基盤となることを予測し、2000年がすぐに来ることを念頭に置いていたら、後に膨大な労力と費用を必要とすることはなかったかもしれない…。改めて、先見の明の重要性と、次世代の技術基盤を創る者の責任の重さを感じます。

 さて、来る21世紀は、バイオの世紀、遺伝子の世紀といわれています。バイオが21世紀の社会基盤となると考えると、バイオに携わる者として身の引き締まる思いです。

 実際に、21世紀への予兆は始まっています。昨年は、ヒト第22番染色体をはじめ、植物でもシロイヌナズナの第2番、第4番染色体のDNA塩基配列が決定されました。そして、今年は、ヒトのゲノムのDNA塩基配列を大まかに決定した草案(ドラフト・シーケンス)が公開される見通しです。モデル動物の解析も急ピッチで進められるでしょう。

 また、遺伝子の機能を解析するために、枯草菌やマウスなどの大規模な突然変異体作出プロジェクトも進められ、着実に遺伝子研究の基盤整備が進むでしょう。また、異なるゲノムの比較も欠かせないため、ますます大規模効率的なシーケンシング、情報処理技術の需要性がますます高まると思います。

 このように遺伝子に関する情報が洪水のように溢れ出す一方で、遺伝子の権利化が急速に進んでいます。そして遺伝子の権利を巡り、学術研究とビジネス、国際協調と国際競争といったボーダーラインがあいまいになり、混沌とした世界になりはじめています。

 日本では今年、国を挙げてヒト一塩基多型(SNPs)解析プロジェクトが始まります。首相のミレニアム・プロジェクトの波にのり、5省庁連携で巨額の予算が投入されますが、現在のところ、具体的な産業応用のための道筋、とくに権利化の問題などは未整備のままです。また、省庁連携も怪しくなっています。企業も交えて、早急に体制を整える必要があると思います。

 また、昨年は、組換え食品、クローン・ウシなど、パブリック・アクセプタンス(PA)問題や、生命倫理の問題など、難しい問題に対する対応を迫られた年となりました。どんなに優れた技術でも、社会に受け入れられなければ何にもならないのだと、つくづく感じています。


 今年はどんなニュースに出会えるのだろう…明るいニュースが多いことを祈るばかりです。今年も、多くの方々から多くのことを学び、皆様にお伝えしたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。(佐原加奈子)


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