明けましておめでとうございます。

 わが国のバイオ産業にとって、勝負の年となる2000年が始まりました。

 わが国のバイオテクノロジー産業は最大のチャンスとピンチに直面しているといえるでしょう。

 2000年以降は、わが国でも新たなバイオ医薬品ブームを迎えそうな状況です。欧米では、バイオ医薬の実用化ラッシュが起き、わが国でも分子標的を明確にした抗体医薬など新たなバイオ医薬品の開発が進んできました。さらに、蓄積した遺伝子情報に基づいた医薬品の開発も始まろうとしています。2003年にはヒト・ゲノムも完全に配列が決定される予定で、いよいよ遺伝子情報に基づいた産業化が始まろうとしているわけです。医薬品開発の変化や遺伝子情報の解明は、診断薬、診断事業にも大きな変革を及ぼしつつあります。

 さらに、環境、エネルギー分野でのバイオ応用も本格化しつつあります。ゲノム情報の莫大な蓄積をもとに、情報産業との融合も進んで来ました。

 バイオ産業のエンジンとなるべき、バイオ・ベンチャーも立ちあがり始めています。今、まさにわが国のバイオ産業の本格化を目指す最大のチャンスが訪れようとしているわけです。

 しかし、一方で、バイオに強い逆風が吹いていることもきちんと認識しなければいけません。ここ数年、わが国のバイオ市場拡大のエンジンであった組換え食品は、農林水産省の組換え食品の表示義務化などを契機にして、食品企業が続々と組換え農作物の不使用宣言、厚生省までが規正強化を打ち出すなど、危機的な状況を迎えています。遺伝子組換えに特有の危険はないという常識がいまや崩壊する可能性すらでてきているのです。産業界、研究者はきちんとこの状況を認識しなければいけません。

 また、遺伝子操作に対する倫理問題、遺伝子情報の管理の問題も2000年はより大きな問題となるでしょう。これらの問題もわが国のバイオ産業、バイオ・ビジネスの行く末に大きな影響を与えます。

 官僚は毅然とした態度をとることが必要でしょう。いくら育成策を打ち出しても、世間がアンチ・バイオで染まってしまえば、バイオ産業にはすさまじく大きな障壁になることを忘れてはいけないでしょう。パブリック・アクセプタンスを得るために、今まで以上に積極的な活動、情報公開も必要になります。根拠不明な2010年での25兆円市場、バイオ・ベンチャー1000社など、耳障りのいい言葉を吐くのは簡単です。しかし、この5年間、10年間、ブームで持ちこたえられればいいというのでは、バイオ産業はないはずです。人類の将来にバイオが貢献するために、耳障りのいい言葉にとらわれず、今に何をすべきか、冷静に判断し、行動すべき時が来ている気がします。



日経バイオテク編集長 横山勇生