国立がんセンターは下記の要領で、第26かい多地点合同メディカル・カンファレンス「新しいがん免疫療法」を本日午後4時半より開催する。


多地点合同メディカル・カンファレンス
 [1999-第26回]

日 時:1999年7月22日(木) 16:30から18:00
場 所:国際交流会館3階
テーマ:新しいがん免疫療法
            (宮城県立がんセンター発信)

         司会 宮城県立がんセンター研究所  海老名 卓三郎
 がんが原発巣にしかない場合は手術して摘出すれば問題はないが、すでに遠隔転移巣がある場合、今迄化学療法や放射線照射が行われてきた。しかし化学療法や放射線療法はがん細胞も殺すが、分裂している正常細胞(特に骨髄系細胞)も殺すため副作用がひどく結局QOLが悪いまま亡くなる例が多い。そこで副作用の少ない第4の治療法である免疫療法が望まれる。 本日は新しい免疫療法として非特異的免疫BAK療法、樹状細胞を利用した特異免疫療法、サイトカイン遺伝子を利用した免疫遺伝子療法につい討論する。

1.CD56陽性NIE細胞を利用したBAK療法
          宮城県立がんセンター研究所 免疫学部  海老名 卓三郎
 成人末梢血のリンパ球を固相化CD3抗体とIL-2で増殖させ培養2週間目に IFN-αを処理してNK活性を活性化させるBRM activated killer (BAK) 療法を考案した。BAK細胞は培養2週目にγδT細胞又はNK細胞を増加させ、全体では常にCD56陽性細胞を20%から50%に増加させ、BAK細胞の中心がCD56陽性細胞であることがわかった。 CD56は神経細胞接着因子であり、CD56陽性細胞がβ-endorphinという鎮痛・鎮静作用を持つ脳内ホルモンを産生していることを見出したので、今迄近い関係にあることが示唆されていた精神神経系ー免疫系ー内分泌系に直接関与したNIE(neuro-immune-endocrine) 細胞であることを見出したことになる。術後転移巣が見つかった末期がん患者にinformed consentを得てBAK細胞6億個の点滴静注を行うpilot studyを行ったところ、副作用がなく
QOLを良好に維持したまま延命効果もあることを見出したのでその経過について報告する。

2.Th1タイプのサイトカイン遺伝子を利用した遺伝子治療
            千葉県がんセンター研究局 病理研究部  田川 雅敏
 各患者の腫瘍抗原ペプチド等が同定され、それによって誘導される キラーT細胞を利用することが出来れば、がん免疫療法は格段に進歩すると思われる。しかしこれは直ちにすべてのがんに適応できることではない。生体内での遺伝子発現がウイルスベクター等の進歩により可能となってきている現在、サイトカイン遺伝子を利用して、抗腫瘍効果の惹起を図るがん免疫療法が現実化する可能性がある。極めて単純な分類が許されるとすれば、免疫応答を左右するサイトカインは、細胞性免疫を司る Th1タイプと液性免疫を司るTh2タイプに大別される。免疫遺伝子治療は、このTh1タイプのサイトカイン遺伝子を腫瘍細胞に発現させれば、腫瘍細胞が抗原提示細胞となり、抗腫瘍効果が得られるのではないかという仮説に立脚している。今回この仮説の検証結果を報告するが、さらに解析を進めて、腫瘍抗原を認識する T細胞抗原レセプターのレパトリーが明らかにされれば、がん免疫療法にさらに寄与できうると思われる。

3.これまでの免疫療法の問題点と今後の展望
             国立がんセンター研究所 薬効試験部  若杉 尋
 1980年代に始まったがんの免疫療法は Tリンパ球を増殖・活性化させるインターロイキン2(interleukin-2; IL-2)などの因子の発見に基づいている。これらの因子の存在下にがん患者の自己リンパ球を体外で大量培養するとリンパ球が活性化されその細胞傷害活性が著しく増加する。歴史的には、この活性化したリンパ球を患者に戻すリンフォカイン活性化キラー細胞 (lymphokine activated killer cells; LAK) 療法が最初に行われた。一方、がんに対して免疫応答を引き起こすようながん抗原の実体の存在は不明であったが、1991年にヒト腫瘍においてもがん抗原の存在が明らかとなった。いくつかのがん抗原は遺伝子レベルでも同定され、病原体と同様に宿主の免疫によって排除されうることが明らかとなった。これらの発見によりがんのワクチン療法や樹状細胞を用いた細胞療法が試みられようとしている。今回は従来の免疫療法の問題点を考え、免疫療法の新たな評価法の確立を含め、今後行われて行くであろう細胞治療の動向についてふれ、がんセンターで今年から行われる予定のDCを用いた細胞療法も紹介してみ
たい。その中でも新しいGCPと製品基準(GMP)に基づいて行なわれる造血幹細胞移植と免疫療法などの、いわゆる細胞療法を科学的手法に基づいて評価する体系を築くことが最も重要であると考える。